CO2排出削減のために、ハイブリッド車などエコカーが推進されるようになってきました。今後それらがガソリン車に取って代われば、排気ガスによる大気汚染と、騒音公害がかなりなくなるのではと感じています。
私の学生時代、すなわち40年ほど前は、大気汚染や水質汚濁、騒音などの公害が問題になっていました。それが現在の職業を選んだ大きな要因のひとつです。したがって、私はガソリン車が減っていくことはすばらしいことだと思っています。特に電気自動車であればなおよいと思います。
ロックウールを製造している日東紡が千葉工場を平成24年に閉鎖されると発表しました。不況の影響とのことですが、実際、ロックウールを用いた岩綿吸音板などの吸音材が、最近使われなくなっていると感じていました。流行りの安藤忠雄や妹島和世+西沢立衛の建築の影響か、また集合住宅の室内の音響反射性の空間に慣れた影響か、最近は、学校の教室などでもほとんど吸音材が使われていません。大型ショッピングセンターの吹抜け空間も、コスト削減のためか、賑やかさの演出のためか、相当騒がしい空間になっています。これでよいのであれば音響技術者の出る幕がありません。
工場に対しては、騒音規制法が、またスーパーマーケットには大店立地法が適用され、騒音の発生が抑えられ、音響技術が役に立ったと感じます。
集合住宅にも多くの音響技術者がしのぎを削って、技術開発を行ってきました。約50年前に始まった分譲集合住宅も相当に騒音対策技術の発展の形跡が見られます。
このような現象を見ていくと、そろそろ音は斜陽産業ではないかと思ってしまいます。
しかし実際には、集合住宅の性能表示制度には、音は選択項目で、一番問題になる床衝撃音などにはこの制度は利用されていません。特にほとんどの木造や鉄骨造の集合住宅は、まだまだ音響技術が開発されていません。さらに集合住宅の改修でも、見た目は新しく出来ても、昔の薄いスラブに対して、有効な床仕上げ材はまだできていません。また美術館などの公共建築や学校や大型商業施設には、音声明瞭性や騒音の低減のために吸音材の施工が必要と思われ、また非常に効果があると思われます。
最近では、ハイブリッドカーが静かすぎることが問題となっていたり、音の問題は、より感覚的で複雑なものになってきているとも言えます。
今後音の仕事として考えられるのは、美しい自然の音が意味を持ってくるような空間の創造や、様々な音楽のための最適な音響空間を探る技術などではないかと思っています。音響の最先端技術として、健康や医学、音楽や楽器、拡声装置などに切り開く分野があると感じています。
2009/08/12
2009/08/11
木造芝居小屋の音響調査、ポーラ伝統文化振興財団から助成決定
昨年度に引き続き、今年も木造芝居小屋の音響調査に関して、ポーラ伝統文化振興財団より、助成をいただけることとなりました。大変感謝する次第です。
この木造芝居小屋の音響調査は、木造劇場研究会(代表 建築家山﨑泰孝氏)が主体となり、弊社はこの音響調査を担当しております。
音響調査は、全国芝居小屋会議と神奈川大学建築学科寺尾研究室と共同で行っており、一昨年は、岐阜県にある白雲座、常盤座、明治座、鳳凰座を、昨年は香川県 琴平の金丸座、愛媛県の内子座、福岡県飯塚市にある嘉穂劇場、熊本県の八千代座、兵庫県豊岡市出石の永楽館の音響測定を行いました。
今年は、秋田県小坂町の康楽館、福島県福島市の旧広瀬座、群馬県みどり市のながめ余興場、岐阜県の村国座、相生座、愛知県の犬山市の明治村にある呉服(くれは)座の調査を行う予定です。
調査の目的は、日本の伝統芸能を育ててきた江戸歌舞伎様式の木造芝居小屋を、音響的な観点から研究することで、邦楽に好ましい音響空間を検討することです。
検討の方法は、残響時間などの物理的音響データの比較と、現場で分析した客席空間のインパルス応答と無響室録音のデータとを畳み込んで音響シミュレーションを行い、聴感で評価する方法となります。
比較の対象としては、クラシック音楽に好ましいとされているホールと、邦楽を主に行っているホールとの比較、また昨年までの調査により、芝居小屋は、室容積と最適残響時間という関係から、講堂や会議室として好ましい音響空間であることが分かったため、講堂も調査対象として予定しています。すでにこれまでに、横浜ふね劇場、つくばの古民家の和室、神奈川大学講堂のセレストホールの調査を行いました。特に、邦楽は残響の少ない空間で育ち、クラシック音楽は残響のある空間で育ったということから、それぞれの音楽の演奏方法や表現方法が、それらの空間と関係していると考え、そこに焦点を当てて、考古学的に研究をしてみようと考えています。
この木造芝居小屋の音響調査は、木造劇場研究会(代表 建築家山﨑泰孝氏)が主体となり、弊社はこの音響調査を担当しております。
音響調査は、全国芝居小屋会議と神奈川大学建築学科寺尾研究室と共同で行っており、一昨年は、岐阜県にある白雲座、常盤座、明治座、鳳凰座を、昨年は香川県 琴平の金丸座、愛媛県の内子座、福岡県飯塚市にある嘉穂劇場、熊本県の八千代座、兵庫県豊岡市出石の永楽館の音響測定を行いました。
今年は、秋田県小坂町の康楽館、福島県福島市の旧広瀬座、群馬県みどり市のながめ余興場、岐阜県の村国座、相生座、愛知県の犬山市の明治村にある呉服(くれは)座の調査を行う予定です。
調査の目的は、日本の伝統芸能を育ててきた江戸歌舞伎様式の木造芝居小屋を、音響的な観点から研究することで、邦楽に好ましい音響空間を検討することです。
検討の方法は、残響時間などの物理的音響データの比較と、現場で分析した客席空間のインパルス応答と無響室録音のデータとを畳み込んで音響シミュレーションを行い、聴感で評価する方法となります。
比較の対象としては、クラシック音楽に好ましいとされているホールと、邦楽を主に行っているホールとの比較、また昨年までの調査により、芝居小屋は、室容積と最適残響時間という関係から、講堂や会議室として好ましい音響空間であることが分かったため、講堂も調査対象として予定しています。すでにこれまでに、横浜ふね劇場、つくばの古民家の和室、神奈川大学講堂のセレストホールの調査を行いました。特に、邦楽は残響の少ない空間で育ち、クラシック音楽は残響のある空間で育ったということから、それぞれの音楽の演奏方法や表現方法が、それらの空間と関係していると考え、そこに焦点を当てて、考古学的に研究をしてみようと考えています。