東京ミッドタウンにある21_21 DESIGN SIGHTにおいて、財団法人 三宅一生デザイン文化財団主催の「THIS PLAY!」という展覧会が開催された。その展示で、音響デザインを担当された作曲家の畑中正人氏と、ヤマハの音響の清水寧氏の講演が9月21日18時半からありました。
展示に使用されている音楽は、ゆったりとしたリズムのきれいなピアノ曲です。それが天井や壁などあちこちから、清水さんの言葉でいうと、音のプラネタリウムのように、星の光がふってくるように時々聞こえてくるものです。その原理は、指向性のトーンゾイレ型スピーカから放射方向を制御しながら、壁や天井に向かって放出し、反射した音が聞こえてくるものです。音が来る方向にはスピーカはなく、宇宙的な不思議な空間の広がりを感じさせるものです。
展示室はいくつかの部屋に分かれていて、服に関係したディスプレイ風の展示とそれに合わせた音響―音楽があります。ある部屋は小鳥のさえずりと木の葉ずれの音で部屋を充満させ、55dBAもあるそのノイズにより隣から来る音を「やわらかく」遮音(マスキング)しているそうです。55dBAは、普通に考えると、うるさく感じる騒音の音量ですが、非常に自然に聞こえます。建物は安藤忠雄氏の設計によるもので、例のごとくコンクリート打ち放しのために残響が長い空間なのですが、このノイズによってその残響の長さを感じさせないようになっています。この方法には可能性を感じました。
私は清水さんに、宇宙的な音響空間とこのノイズの可能性を評価したうえで、しかし安藤忠雄氏の空間は静かそうに感じるが実は騒々しく、また聴覚的には自然の中にいるようだけれど、視覚的には単なるコンクリートの空間の中であり、双方ともトリックのようだと伝えました。視覚空間と聴覚空間は、本来は一致すべきであると思います。
この方法は、このような特殊な空間では実験的に可能性を開くものと考えられるし、また商業施設などにおいても、騒々しい中で空間を分けて個々の空間を作り出す可能性があります。ただ、講演でも質問がありましたが、事務所または住宅などでは、このような方法で(自然の中の美しい音を使って)「柔らか」な騒音対策を試みても、普段は存在しない音に対しての違和感が出てくるように思います。