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2025/01/27

須川展也 サクソフォン・リサイタルwithフィリア・サックス・バンド

 日時:2025125日(土)2時から4時ぐらいまで。

場所:青葉区区民ホール フィリアホール、満席であった。

出演:1部は須川展也+ピアノ 小柳美奈子、2部は須川展也ほかフィリア・サックス・バンドで、多分メンバー編成は即席のものかもしれないが、加藤里志、木村有紗、今野龍篤、塩塚 純、諏訪直風、高橋龍之介、放生幹也、堤 華奈で、ソプラノからアルト、テナー、バリトンを2台ずつで編成している。 とくに木村有紗さんは私の飛島建設時代の同窓生の娘さんで、時々気になってコンサートに行っています。

曲目は、1部はロンドンデリーの歌、J.S.バッハのシャコンヌ、イベールの間奏曲、レガシー・オブ・グレンミラーで、中でも無伴奏のシャコンヌは、本来は無伴奏ヴァイオリンの曲ではあるが、それをサックス用に編曲して、素晴らしいサックの技術で、難解な曲をこなしていた。素晴らしかった。

2部は須川展也とフィリア・サックス・バンドで、吹奏楽の曲を編曲したブラボー・サックス、ラヴェルの亡き王女のためのパヴァーヌ、ドビュッシーの小組曲よりⅣ.バレエ、ラテンメドレー で ラヴェルの曲は特に素晴らしく感じた。さらにアンコールはTake the A trainで、これは楽し気でいい曲だった。クラッシクの曲からラテンやジャズまで、幅広く、奥深く、心がサックスの甘く・柔らかな音で充満した。

     写真 幕間に撮影 椅子が後半に備えて配置されている。






2025/01/24

建築音響の交流の歴史 その11 うなり

 うなりとは  「唸り(beat)はわずかに異なる2つの音波の干渉によって、観測点に生じる時間的な振幅変化であり、1秒間の唸りの回数は2つの音波の振動数の差になる。この現象は、楽器の調律のように一方を振動数のわかっている標準音波とし、他方の振動数を正確に測定・制御するのに利用される。」 p.12前川純一著建築・環境音響学から引用。唸りはこのように建築音響技術の一つで、音響技術者としては物理的な現象の一つとして理解されている。

ただお寺の鐘は唸りを生じて減衰する。多分この唸りを伴う音は人々の願いを天に届ける役割があるように思う。そういえば地鎮祭の時に神主が天から龍が下りてくるとき、また天に龍が戻るときに神主が唸りを発する。この神主は具体的に唸りの効能を述べているようだ。さらに仏壇のリンも唸る。日常的に唸りの音は聞いている。

このお寺の鐘の唸りは、チベットのお寺の鐘も唸るように作られているのではないか。以下の写真は左からタイ、バンコクの暁の寺の屋根にたれ下がっている鐘と同じもののお土産品、中央は重慶の飛行場でのチベットのお寺のお土産、右はサンフランシスコのケーブルカーの中にある鐘をお土産品として売っているもの。左二つは唸りを生じているが、右側のサンフランシスコのケーブルカーの鐘は唸らない。たまたま唸りを生じないのか唸るべきものなのかは正確には分からない。

                           写真:左から暁の寺の鐘のお土産品、中央はチベットの鐘のお土産品、                                         右はサンフランシスコのケーブルカーの鐘のお土産品

イギリスのトレヴァー・コックスの著 「世界の不思議な音」(The Sound book, The Science of the Sonic  Wonders of the World)の「8.音のある風景」p.267で、ランドマークとして、「イギリスを代表する音といえば、ロンドンにある国会議事堂の時計台に納められた巨大な鐘、ビッグ・ベンの音だ。イギリスでは、ビッグ・ベンは新年を迎えるときにならされ、何十年間もニュース番組の冒頭で流れ続け、休戦記念日には二分間の黙祷の開始を告げるのにもつかわれる。」「まず金属がぶつかり合うカーンという音がして、それが次第に弱まるにつれて朗々と響く音になり、20秒ほど続く。最初のハンマーの打撃から生じる音は高周波成分が多いが、それはすぐ消失し、もっとおだやかな低周波の響きが残ってゆったりと震音を発する。」「鐘の場合は対称性によって、というか対称性の欠如によって、震音を生じる。完璧な円形でない場合、鐘は唸を生じる二つの近接した周波数を持つ音を出す。教会の鐘を新たに鋳造するとき、西洋の鋳造所ではそのような震音を避けたいと考えるのはふつうだろう。ところが韓国では、この効果は音の質を決定する大事な要素と見なされている。西暦771年鋳造された聖徳大王神鐘(ツンドクテワンシンジョン)は「エミレの鐘」という呼び名の方がよく知られている。この鐘を鳴らすと「エミレ」(お母さん)と子供が泣き叫ぶような音がすると言われているのだ。この言い伝えによると、鐘の音をよく響かせるために鋳造氏が自らの娘を人身供養としてささげられたという。」この鐘の音は良く響かせるために子供を犠牲にしたからこの唸りが出来てしまったという唸りに対する否定的な解釈だ。「ビッグ・ベンが明瞭な唸りを発するのは、いくつかの傷のせいで二つの周波数が生じるからであり、その傷ははっきり見て取れる。」 このビッグ・ベンについても傷のせいで唸ってしまっているということだ。しかし私の周辺の鐘の音は、子供が犠牲になったから唸っているのではなく、わざわざ唸るように作られているように思う。

トレヴァー・コックスの本では、鐘はイギリスの国会議事堂の鐘であるが、私はウイーンのホラインの事務所に総計半年ぐらい居たことがあり、そのすぐそばの鐘の音を12時になると毎日聞くことが出来た。その音は唸りを生じていない音で、ここに神がいるという感じだ。この鐘の唸りを設けないというという歴史はどこから来たのか!!

BC6世紀ごろ、ギリシャでピタゴラスが音律を作った。この音律は二つの音を同時にならしても唸りを生じないように、ドの1.5倍(3/2)のソを設定し、更にその1.5倍(3/2)を設定し、2を超えたところで、2で割り、更に同じことを繰りかすえす。

倍率

1

3/2

9/8

27/16

81/64

243/128

729/512

2184/1024

音名

ファ

ピタゴラス音律の問題として、オクターブ上のドを2倍にするために729/512のファになる音を人為的に4/3としてドを2倍とすることで、以下のようにドレミファソラシドの音程ができる。

音名

C

D

E

F

G

A

B

C

 

ファ

比率

1

9/8

81/64

4/3

3/2

27/16

243/128

2

窮理社(https://kyuurisha.com/)の「聴き比べ:古典音律(ピタゴラス音律、純正律、中全音律、ウェル・テンペラメント)と平均律」を参考にした。

ピタゴラス音律の問題は基準音に3/2倍を繰り返しただけでなく、オクターブに対応するためにファの729/5124/3に強制的にしてしまったことで、唸りを生じてしまうことだ。このことをウルフ音という。狼の遠吠えの声だ。したがってフラットのない弦楽器は意図的にわずかにずらして、唸りを生じないようにしているようだ。

ピタゴラスと時間的な違いはあるが、歌舞伎でも人形浄瑠璃でもお囃子の笛は1本だけのような気がする。これは唸りを回避する目的があるような気がする。近所の都築太鼓の公演のときに、数台の太鼓と2台の篠笛で演奏していたのを聞いたことがあるが、篠笛はフルートのように筒の長さを微妙に調整が出来ないために、2台を同時に鳴らすと唸りを生じてしまう。

さらにインドネシアのガムランは、楽器そのものが唸るために、ゆっくりと演奏しているような気がする。

日大の塩川教授のグループが以下の論文を提出している。『音響解析を用いた金属製打楽器の変遷-「うなり」の文化としての東洋音楽史-』 last update 2024.12.14 (since 2021.9.20)

ガムランについては、『これら金属製打楽器は厚さを均一に製作することは難しく、その厚さの差によって、周期が異なるさまざまな「うなり」が生じてしまう。そのため、逆にこの「うなり」を楽器の音色として特徴づけ、「うなり」の音楽としてインドネシア・バリ島のガムラン音楽が生まれた。』『バリ島のガムランには、儀礼や舞踊の種類などによりさまざまな楽器あるいは楽器編成が存在する。基本的に、いずれも屋外で演奏され、大きな特徴として、鍵盤楽器は2台が一組を成しており、それらの対の鍵盤が音の高さをお互いに少しずらして「うなり」が生じるように調律されている。』 ただこの論文の中にはお椀を伏せたような楽器群 ボナン・ブサール、ボナン・ブヌルス等のことについては言及がない。ただこれらも一対で存在しているような気がする。

ジャワガムラン奏者である大田 美郁さんに追加していただいた。

「ガムランについては」という段落にある、ボナン・ブッサール(大きい)とボナン・プヌルス(小さい)ですが、これはジャワの呼び名で、バリでは小型置きゴングはレヨンやトロンポンといって1列に並んだ形です。そして、鍵盤楽器、太鼓についてはうなりを伴う2台一組ですが、レヨン系は1台なので、うなりに関してはちょっと他と違うかもです。そして、ジャワのガムランの楽器は、2台一組でうなりを生じる、ではなくて、全体として少しずつずれていて(ずらしていて)うなっている、の感覚かなと思います。

音の不思議をさぐる 音楽と楽器の科学 チャールズ・テイラーの5.3平均律の音階p.252で、平均律と純正律とを比較している。

音名

C4

D4

E4

F4

G4

A4

B4

C5

平均律

261.6

293.7

329.6

349.3

392

440

493.9

523.2

純正律

264

297

330

352

396

440

495

528

平均律の場合には、純正率やピタゴラス音律の場合と違い、唸りを生じる。ミ(B4)とファ(F4)の間には、19.7Hzしかないため、唸りを聴きやすい。現代のフランスの作曲家メシアンのピアノ曲などはわざわざこの唸りを生じるように作曲をしているとピアニストの青柳いづみこさんに聞いたことがある。

『メシアン音楽の神秘』という文書の中に、ピアニストの深貝理紗子が『これによって2種類の倍音が生じ、低音側からの周波数、ノイズが多くなります。ここにさらに違った組合せの音程がペダルのなかに重なり合わさる―その終着点、つまりペダルの響きのみとなった部分にようやく、メシアンの聴いていたであろう鳥の声の残像が現れます。』 このことは唸りと書かれていないけれど何となく想像できる。この唸りは多分自然の鳥の声を表現しているように思う。

ピアニストの久元さんのベートーベンのピアノ・ソナタ全曲演奏会Vol.1のブログ(2023.11.10)を書いたが、ヴェーゼンドルファーのピアノを、純正律を中心に調律したとのことで、濁りがないきれいな音で演奏していた。 

http://yab-onkyo.blogspot.com/2023/11/vol1.html


2025/01/23

東京科学大学 環境・社会理工学院 建築学系の吉田綾乃さんの卒業論文202412の感想

 テーマ:Knowledge and Practices of Architectural Acoustics of Ancient Theatre Design,

Focusing on The Ten Books on Architecture by Vitruvius

この論文は元東工大の特任教授の清水さんから頂いたものです。本文は全て英語で書かれているのでびっくりです。それを、Google翻訳を交えて読んでみました。

主題はVitruviusの劇場設計についてで、意義の項目で、『建築は、技術的な側面と美的・文化的な側面を別の学問として研究されることが多い。、、、建築音響設計には、1) 波などの物理的現象としての音、2) 建築設計における音の応用、3) 音の心理的印象という3つの主要な研究分野がある。しかし、これらの分野が単一の学問分野として扱われることはまれである。しかし、ヴィトルヴィウスが生きた古代ローマでは、そのような区別は極めて稀であった。』とあった。

吉田さんの問題意識の中に、建築は技術的な要素と文化的な要素を別々に研究することが多く、音響設計でも物理的な面と心理的な面を別々に研究していることが多いと。たしかに大学の研究室ではそのような分野ごとに分かれているように思う。また音響学会でも分野ごとに分かれて発表している。しかし数年前に私も参加した東大建築学科の建築環境の森下先生の研究では、森の効果を医学的な立場から、心理学的な立場や音楽的な立場や音響的な立場から合同でかかわることも行っている。 また以前当社にいたアントニオさんは、グラナダ大学の4年生の時には、四川大地震の時に崩壊する建物から発生した超音波の研究をしていて、大学院を卒業してから、東工大の研究者として、飛行機の破壊するときに発生する超音波の研究をしていた。現在は、わが社を経て5年ほどになっているが、イギリスの音響事務所のRSKで、タンザニアの山の変形時(多分地震時または地滑り時)に発生する超音波の研究をしているようだ。いずれも音響技術だけでは解決できない分野になっている。建築音響の分野では、Sabine以降、残響時間の求め方や反射音の構造の研究が盛んで、ヨーロッパのクラシック音楽を対象に好ましいコンサートホールについて研究してきた。ただ最近では電気音響を用いて、ギリシャ劇場のタイプでクラシック音楽を演奏する例や、教会の中でクラシック音楽などを演奏する例もみられるようになった。さらに和太鼓やオペラや合唱やガムランや歌舞伎や人形浄瑠璃などのために室内音響もテーマになるのではないか。多くが学際的なテーマだ。

さらにピタゴラスがつくった音律、いかに唸らないかで出来た音律が最初で、一般的にはさらに、この後ヨーロッパの中世に純正律が出来て、その後クラシック音楽が作曲されるようになったが、現在では移調の容易さから平均律に変化している。ただこれらのことについては吉田さんの論文には出てこなかったが、ピタゴラスの後にAristoxenusBC375300)がElements of Harmonyという本を書いたとのこと。このHarmony はクラシック音楽ができる前のドミソの和音のことではなく、ギリシャ音楽の基本構造はテトラコルド(tetrachord)から成り立っているとのこと。以下テトラコルでについて、論文内のグラフを引用した。ファから高い方のファまでで、1オクターブの中を、赤い4つの音を示している。

別の本、Henry S. MacranによるThe Harmonics of Aristoxenusの本によると、テトラコルドの4度音程は、ギリシャ人の耳が境界音の関係を即座に把握できる最小の音程であり、音楽的概念を間接的に知覚するには未熟のためとあった。どんな曲であったのか気になるところである。

またギリシャ劇場の椅子の下に置かれているSound Vesselは『劇場が木で作られている場合は、木材が共鳴するため、Sound Vesselは不要であると主張している。彼が木材の吸音特性とSound Vesselのどちらを認識していたかは定かではありませんが、両方が音の明瞭性に与える影響を認識しており、その結果としてこの指示を出した可能性があります。』 確かにギリシャ劇場は円弧上に拡がる椅子による客席空間やスケーネなどによって、残響感がある。その影響を減らすためとも考えられるが、正確には目的はよくわかっていないようだ。このことは日本の能舞台の下に置かれている大きな甕も似たようなことがある。

音楽のエトス理論は、アリストテレス、プラトン、その他の哲学に組み込まれた。この理論は、音楽には特定の「気質」に影響を与え、人間の精神の最も深いところまで浸透する力がある、さらに古代ギリシャとローマでは、音楽は個人に大きな影響を与えると信じられ、この概念は教育と政治に適用されたようだ。ヴィトルヴィウスは、音は空気を球形上に伝搬していることや客席の段には上段にでっぱりを付けて、反射音が得やすい状態にしていることや、途中の横通路より上の段も客席の勾配を直線で結べるように考えたり、残響時間をスケーネ部分の空間の残響時間音の長さを利用して、ヴィトルヴィウスによれば劇場のオーケストラの部分で役者が演技をおこなったり、合唱やダンスを行ったりしていたようだ。のちにEringがスケーネの前の空間と客席の空間との連結空間を実験して、影響を受けていることが確認できたようだ。

ヴィトルヴィウスはギリシャ時代から音についての理解はかなりあって、公共建築としての劇場を設計していたようだ。吉田さんはこのヴィトルヴィウスの世界のなかで、広く深い世界にいられたようだが、現在の建築設計では、深く広い建築設計の分野に、さらに耐震設計を含む構造技術的なこと、設備技術的なこと、環境・音響技術的なことなどがそれぞれ奥深く存在している。最近、ベルリン工科大学にいたクレメンスさんは、日本の芝居小屋や明治時代のホールの音響の研究をしてドクターを取得したが、昨年の暮れの手紙では、世界の海洋音響の仕事で、世界を回っていると言っていた。吉田さんにとって、改めて次はどんなことがテーマになるのかじっくり考えて決めていく必要があるようです。

テトラコルドに関して追加20252018

テトラコルドという言葉で思い出した。小泉文夫著の『日本の音』平凡社刊 の中の最初の章の『世界の中の日本の音楽』で、『日本で主に用いられている音階は五音音階です。中略、、、伝統的なものに限って申しますと四種類のテトラコルドから成り立っています。五音音階というのは1オクターブの中に五つの音があるという意味ですが、しかしその成り立ちを考えてみますと、二つのテトラコルド、すなわち四度のワクというものでできあがっていることが多いわけです。』  『このテトラコルドには半音を単位として考えた場合に、四種類のものがあると考えられます。第一種は、四度のワクの中に、下から数えて短三度音程のところに中間音がくるもので、これは日本のわらべうたや民謡の中でもっとも大切なものです(譜1)。しおかしこれは日本の一番基本的な音階であるばかりでなく、朝鮮においても、また中央アジアにおいても、さらに遠くはトルコ、そしてヨーロッパの中ではハンガリーの民族音楽の一番基本的な、最も古いタイプとされています。』 この文は第四種まであるが、いずれも古代ギリシャの話はなかった。ただこのテトラコルドの話はギリシャをこえてヨーロッパまでつながっている。また語源のテトラはギリシャ文字だ。とおく古代ギリシャ時代のアリストクセノスまでつながっているかもしれない。


2025/01/15

新たに尺八を購入

 今までの尺八は割れてきてしまっていて、音が出にくくなって来ていたので、中古の尺八をあらたに今日(2025.01.12)購入した。ただし大きさは、19寸。購入先は和楽器ネット。新しく購入した尺八は、以前と比べ全然、音は出やすくなっている。