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2023/11/10

久元祐子 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会Vol.1

 2023年11月7日(火)19:00開演

場所:サントリーホール ブルーローズ

ピアノ:ヴェーゼンドルファー社製 280VCピラミッド・マホガニー

ベートーヴェンのピアノソナタは全部で32曲あるようだが、今回は、そのうちの4曲を最初に演奏する。曲目はピアノソナタ第1番、ピアノソナタ第5番、ピアノソナタ第4番、ピアノソナタ第8番「悲愴」、ピアノの音は柔らかな音で、高音も自然な柔らかな音になっている。ピアノコンサートではほとんどの人がスタインウエイアンドサンズ(Steinway&Sons)のピアノの音で、多分言い方が厳しいが、高い音は金属板を叩いたような硬い音となっている。今回はそのようには聞こえない。ピアノはものすごい力で鉄の枠に設けられた弦を強い力で引っ張っているので、このような硬い音になると思われるが、多分、この高い音の弦にも高調波が混ざるようになっていて、そのことによってやわらかく聞こえるのではと思う。この音が、280VCのみの音なのか、それともヴェーゼンドルファーのピアノがそのような音になっているのかはいろいろ聞き比べる必要がありそうである。また曲のすべてにも濁りが無いようで、これは調律の問題の可能性もある。ようするに現在の平均律ではなく、中世の音律、純正律を基にしている可能性もある。またこの音は久元さんでなければ出せない音なのか、それともほかの人が同じ楽器を弾いたら同じような音になるのかも気になるところである。いずれにしても、ものすごく考えられたいい音である。

アンコール:シューベルト:悲しみにワルツ、グリーグ:アリエッタ

 純正律について、次のブログで触れている。「中世 ヨーロッパの音律の純正律は何で必要になったか?」 https://yab-onkyo.blogspot.com/2023/01/blog-post_23.html

             写真:コンサート終了後にヴェーゼンドルファーを撮影



2023/11/09

第26回 都築区三曲協会演奏会 箏・三絃・尺八のしらべ

 場所:横浜市都築公会堂(定員604名)、ただし半分ほどの席しか埋まっていなかった。日時:2023年(令和2)11月5日(日) 11:30から15:40 ただし私の参加は14時ごろ

曲目は13番目の緑彩の刻から最後まで。ここでの三曲は、箏、三絃(三味線)、尺八であった。残念ながら三曲のコンサートは私にとっては初めての経験です。しかし演奏者はたくさんいて、しかも皆さんは大変上手でした。しかも入場料は無料でした。14番目の花笠スケルツォは、よく聞く歌のアレンジですが、その他は初めてだった。ただ私はクラシックの音楽をよく聴きに行くが、同じような感覚で聞くことができた。

劇場は定員604席、舞台は音響反射板が設置されていた。在席は約半分のため、どちらかと言えば、クラシック系の音楽に好まれる響きだ。この響きが箏や三味線や尺八の音色に好ましいかどうかはよくわからない。音響反射設備を幕設備に換えたらどうなるのか実際を聞いてみたかった。

 邦楽の公演を行う場所としての国立劇場はこの10月(2023年)に閉館され、今度は劇場だけでなく、ホテルやオフィスを含む施設をPFI事業で再開発を行う予定で、企画コンペを行ったが、2度も不調になったままとなっている。国立劇場は1966.10竣工し、桟敷席のない歌舞伎劇場としては異質のものであったが、建設当時は企画側の人によれば、今後の多目的劇場の基本形を求めたと言っていた。ただ歌舞伎や人形浄瑠璃を行う場所として、また落語なども行っていた場所として存在していたので、今後しばらくは困った状態になってしまう。東京周辺には移動式テントの平成中村座以外には、収容人員500~600名の芝居小屋がないので、このような施設があると便利ではないかと思う。今回行った三曲演奏会も芝居小屋があると便利かもしれない。

 都築公会堂のかえりにセンター南駅の前で 大道芸をやっていて、芸人の周りには、ほぼ小さな子供たちが4~5名みていた。しかししだいに大人たちも見始めて、たくさんの人になって、最後は盛り上がった。



2023/11/08

新版 小栗判官・照手姫 游行寺公演

公演は日時:11月4日(土)14:00より、場所:藤沢の遊行寺(ゆぎょうじ)で行われた。

 案内によれば、藤沢駅の北口からあるいて15分とあったが、途中蕎麦屋(そばーるひだまり)によって、行ったので、遊行寺へは、1時ぐらいに着いた。このお寺は由緒あるお寺で、相当古くからの銀杏の木が生えていた。また小栗判官と照手姫のお墓がある。まずそこにお参りして、公演のある本堂に向かった。遊行寺は「ゆぎょうじ」と読むが「遊びに行く」とも読める。結構広く遊べるような感じもしてきた。私は日本には広場がないと思っていたが、この遊行寺の本堂前の土地はとても広く何かに使える。そういえば出雲の阿国は京都の北野天満宮で歌舞伎踊りを行ったようだが、これも広場ともいえる。それだけでなく本堂の中は案外広い。今回横浜ボートシアターが行った本堂は観客を入れて公演ができるほどだ。そのようにすれば多くのお寺で、許可を得さえすれば演劇や音楽の公演ができることになる。今回の遊行寺は小栗判官と照手姫の墓があり、また物語も仏教的な話もあるので、小栗判官・照手姫の公演を行うにはいい場所だ。

 


公演はこの遊行寺の本堂であるが、受け付けは入り口の階段の上で行い、靴を入れるビニール袋は横浜ボートシアターでは初めていた外国人がくばっていた。

本堂は写真のように、ご本尊の前空間を、舞台および観客席として、前の方の数列は船劇場でもちいている座椅子を用い、後部は折り畳み椅子であった。室内の大きさは、舞台は約10m×5m、観客席も同様の大きさで、天井は約10mあった。実際に測ったわけではないので私の想像です。観客は満席で、ほぼ200名はいたのではないかと思う。舞台の周辺は幕で仕切られ、楽屋とそこから舞台へ出る通り道になっていた。また前半、照手姫が退場するときには、観客席の中央につくった通路を通って、本堂の前の扉の外に出ていき、前半が終了していた。後半は餓鬼を数人がえいさらえいと声を出しながら引いていき、やはり本堂の前の戸を一度出ていき、また戻ってきていた。このような動きは、お寺の本堂という半分演劇的、半分現実的な雰囲気の中で行われていて、夢の世界か現実かよくわからない状態に持って行けたように思う。俳優たちのセリフも本気で大声を出していて、わずか数mのところで話されているので、これも現実に様に聞こえてきた。えいさらえい、えいさらえいと大声を出しているのを聞いてきると、生きろ!生きろ!と聞こえてくる。戦乱の多いとくに今は重要な言葉だ。

 


2023/10/30

ふね劇場での新版小栗判官・照手姫 公演

 2023年10月25日(水)18:30より横浜ボートシアターの公演「新版小栗判官・照手姫」が、船劇場でありました。2020年2月に亡くなった前代表遠藤啄郎の2度目の追悼公演です。その遠藤さんの代表作がこの小栗判官・照手姫です。しかも艀を劇場に改装した中で行われる公演で本来の形になっています。しかし残念ながらこの船劇場は誰でもがいける場所にまだ係留することができていないため、関係者だけのプレビュー公演となっています。近いうちに誰でもが参加できる場所に置けるといいと思っています。これは遠藤さんの希望でもあります。本公演は、出演者はチラシによれば8名となっていますが、劇の中の登場人物はたくさんいて、しかもその中でオペラのように、たくさんの楽器、上手にも下手にもある楽器を演奏する人も必要になります。まず舞台の上の人物になるときに、遠藤さんの作品によくある仮面を用います。最初の登場人物は若い夫婦で、そこで本主人公の小栗が誕生します。演奏する場合には、仮面をとって、かわるがわる様々な楽器を演奏します。また揚幕や引幕は最初からありません。また大道具は舞台の上に大きな石風のものが二つだけです。役者はその石の間から登場します。さらに客席側の中央にある下部へ行く通路からも登・退場します。舞台の下には役者が客席の下にある空間から舞台へ移動する通路も低いながらあります。これらの複雑な劇場の構造は、一般の劇場にはない、本日いらっしゃった舞台芸術家の堀尾さんのデザインです。

 はじめに松本さんがお寺で使うような中型の大きさのお椀の形のリンの縁を棒でこすりながら小さな音を出していると次第に大きくなり、しかも唸りを生じてきます。これが多分今後の展開を示しています。小栗が石の間から登場したときは、太棹の篠笛をきれいな音で吹いて出てきました。実はいつもは音楽家の松本さんが主人公の小栗を演じていました。もちろんギターや太鼓(和太鼓ではない)や雅楽で出てくる和琴(わごん)らしい箏も演奏していました。俳優たちが大勢で合唱する場面があって、ハモっていました。ギターも生き生きしていて、太鼓も勢いがあって華やかでした。小栗は毒殺されて地獄に落ちるが閻魔大王に救われて、餓鬼の姿になって、地上に戻る。餓鬼は骸骨のような頭の人形で、俳優奥本さんが抱えて歩く。餓鬼の胸にはこのものを熊野の湯にいれろとの札がある。「一引き引いたら千僧供養、二引き引いたら万僧供養」と言いながら、多くの人々が何日もかけて餓鬼をひいて、最後に熊野の湯に入れ、小栗に再生する。この一連の場面がこの物語の言いたいことだと思われる。私にはとにかく前を向いて生きろと聞こえてきた。音楽も含めて生き生きしていた。演出は吉岡紗矢です。

 しかし改めてこの強いメッセージを感じながら、今行われているウクライナとロシア、パレスティナとイスラエルの激しい殺し合いの戦争を思い浮かべてしまう。何とかならないか!こんな時代だからこそ必要なメッセージだと思う。

※六郷特別出張所区民ギャラリーで、元横浜ボートシアターの木村さんが仮面を展示していました。家が隣同士の絵本作家のことは書かれていましたが、横浜ボートシアターのことは書かれていませんでした。しかしこの劇団の仮面は人生に非常に強い印象だったに違いがありません。いくつか展示されていた仮面を一部以下に示します。




2023/10/17

安達朋博ピアノリサイタル

 2023年10月14日(土) 開演19時より約21時30分に、安達朋博のピアノリサイタルがサントリーホール大ホールでありました。最初の曲はバッハのパッサカリアとフーガで、オルガンの曲としてよく知られていますが、演奏された曲はピアノに編曲したもので、オルガンの低音がピアノでもよく響いていました。次はラフマニノフでショパンの主題による変奏曲です。前半は多少緊張していたせいか硬い雰囲気でした。幕間の後の後半はドラ・ペヤチェヴィッチのピアノソナタで、1915年の作品です。流れるような華麗な曲です。ただこの作曲時期は第一次世界大戦がはじまった時のようで、プログラムによると、それから刺激を受けているようで、従軍看護婦としても働いていたそうです。ペヤチェヴィッチはクロアチアの人で、安達さんは日本クロアチア音楽協会の代表を務めていて、ペヤチェヴィッチの音楽については造詣が深いとのこと。最後はリストのベリーニの歌劇「ノルマ」の回想で、オペラの劇的なところをとらえたものです。いずれも難しい曲で、特にラフマニノフの曲はむつかしそうな曲でした。アンコールはベートベンのエリーゼのためにとチャイコフスキーの瞑想曲。

曲が終わると安達さんがマイクを持って説明をしていましたが、その拡声用のスピーカは多分天井に1か所でした。1か所にしたのは、多分音声の明瞭度をあげるためではないかと思われます。富岡製糸場の西置繭所ガラスホールの拡声方法は、左右のスピーカがホールの端にあり、おたがい約25m離れたところにあります。

(以下に示す。https://yab-onkyo.blogspot.com/2023/10/150.html) このようなサントリーホールの例も参考にすべきと感じました。




2023/10/10

富岡製糸場 行啓150周年記念講演会・ピアノコンサート

 2023年10月8日(日)13時15分~16時30分に富岡製糸場西置繭所多目的ホール(ガラスホール)で行われました。私はこのガラスホールの音響設計にかかわることができて、音響測定の結果を建築学会に発表することができました。

(http://yab-onkyo.blogspot.com/2020/09/blog-post.html)

音響設計の趣旨は、壁・天井のほぼすべてがガラス、床はフローリングでできているので、ほぼ音の反射性の材料でできている。しかも羊羹のような形の直方体となっており、いろいろ音響的な問題があるので、どのようにしてコンサートや講演や演劇に好ましい状態とするかというのがテーマでした。この音場を拡散音場として残響時間の計算をすると、幸いなことに天井が低いために、人間の吸音力が十分大きく、人が50名在席すれば、コンサートに好ましい状態となり、100名在席すれば講演にも好ましい状態になることがわかりました。問題は、長手方向は壁同士で、音が反射を繰り返すとエコーとなり、音声明瞭度を害することです。そこでこの妻壁の一部を上向きの反射性として、長距離の往復反射をほぼなくすように計画しました。

       写真:ガラスホール、下手側奥に音の反射板の入っているガラリが見える。

        写真:上向きの反射材の入っているガラリ、一部吸気口がある。


     写真:ガラリの部分の奥には、音を上に向けて反射させるための反射板がある。

            写真:中央には演台がある(ちょっと柱にかかっている部分)

写真:コンサート時、ピアノ2台、左奥には下手側のスピーカがある。ただしコンサート時は使用せず。

             写真:上手側のスピーカ(赤で囲む)

最初は富岡市の方が、本公演の富岡製糸場の明治6年(1873年)に行われた皇后・皇太后の行啓の意図についてお話をされ、次に塚原康子さん(東京藝術大学教授)によって、お二人のピアノ演奏や音楽との関わりについて、講演会がおこなわれました。内容はほぼ2時間にわたり、かなり具体的で、多岐にわたりました。明治天皇が京都から東幸したことからが始まって、ブリュナ夫妻が、西洋料理を供進したこと、奥様がピアノを弾じたことなど、昭憲皇太后が雅楽や箏を習ったこと、フェントンが作曲した君が代を聞いたこと(音として聞くことができた)、さらに能楽も習っています。芝能楽堂が明治14年に開かれたこと、さらにこの芝能楽堂は経営難から明治35年に靖国神社に移築されたことも講演されました。

講演のとき聴衆はほぼ100名、それなりに吸音材?は十分と思われましたが、実はスピーカが二台、部屋の端にそれぞれ置かれ、その間はほぼ25mもあり、そこから拡声された音は一方のスピーカに近いところで聞いた場合には、約25m/340m=0.073秒で、別の方のスピーカからは73ms遅れて到達してしまうことになります。直接音から50ms以上遅れて聴こえる音はエコーになりやすいと言われているので、座る場所によっては、かなり遅れて到達してしまうことになり、実際にも音声明瞭度を害していたように感じました。




後半はピアノのコンサートです。演奏者は下山静香さん(桐生市出身)で、写真にあるようにアップライトピアノとプレイエルのグランドピアノの2台で演奏していました。曲の1音目からとてもきれいな澄んだ音で聞こえ人間のみが吸音材ですが、在席数が約100名とほぼ満席で、吸音材として十分なため、ガラス張りのホールとは感じられませんでした。音響設計をした立場からは正直言ってほっとましました。


 






2023/10/05

ウクライナへの祈り 日宇アーティスト達の饗宴! Vol.3のコンサート

 ウクライナへの祈りというコンサートは、2023年10月1日(日)14:00より、慶応義塾大学協生館2Fの藤原洋記念ホールであった。私にとって初めて行く劇場である。

前半の3曲はヴァイオリンとピアノの曲で、朗読を最初に行ってから演奏が始まった。ピアノとヴァイオリンの音のバランスがよく、よく響いて聴こえた。

後半は俳句朗読の後、バレエ、サキソフォン、合唱、さくらさくらVer.など多くの人たちが出演して賑やかに公演した。アンコールはウクライナ民謡(よく知る歌)だった。

その後、あいさつに立った人が、ウクライナではロシアと戦争中であるが、バレエやコンサートを普段のように行っている。空襲警報がなると地下に避難するような状態であるにもかかわらず、バレエやコンサートは大事にされているとのこと。心の安定のためには音楽や演劇は多分必要なことと思う。

今回のコンサートでは、舞台後部の壁ではなく、スクリーンが出てきて、ウクライナの現在の状況をスライドで映し出していた。このことでウクライナの現在を我々につなげることができたと思う。

演奏が行われた慶応義塾大学の藤原洋記念ホール(以下の写真)はきれいな劇場である。音響設計もされており、舞台の天井が高いにもかかわらず、舞台音響のために、音の返りのための庇(リブ)が壁についており、多分演奏しやすいように思う。収容人員は約500席、舞台後壁の壁は開放し、外部が見えるようになるとのこと。

舞台後壁が開いて後ろの景色が見えてびっくりしたのは、赤テントの公演の時、舞台の後ろの幕が開いて、超高層ビルの前で、重機が人を載せて回転していたこと。そのほか豊洲シビックホールの日中友好記念コンサートで、レインボーブリッジの照明が見えたこと、姫路城の前で平成中村座の天守物語公演で、舞台後壁が開き、天守物語の舞台になった姫路城が目の前に現れる場面(テレビで放映)、いずれも舞台と現実が一体となったような雰囲気が得られていた。

 最近放映されたNHKESのクラシック音楽館では、バッハの無伴奏チェロ組曲をスイスの氷河を舞台にして、地球環境を踏まえて演奏していた。この場合にはチェロの演奏は室内音響の効果は無視して、環境とのかかわりをむしろ重要しているように思う。さらに森の中での演奏も適度な木々からの反射が得られ、室内音響のような響きを感じ、コンサートの可能性があるように思う。

                写真 劇場がはねた時に撮影した。