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2018/12/20

建築学会から床振動に関する新基準が発刊されました

11/8に建築学会のシンポジウムが建築会館で行われ、『建築物の振動に関する居住性能評価基準・同解説』が発表されました。

これまで、この床振動に関する基準は1991年および2004年の『建築物の振動に関する居住性能評価指針同解説』であり、それがずっと我々の解説書でした。

1991年の基準書には振動の変位と加速度の基準値があり、住宅や事務所における振動の基準もありました。2004年版の基準では、加速度が水平と垂直にわかれており、知覚確率を伴った評価の方法となっていましたが、評価の方法は設計者に任せられていました。

今回の2018年の新基準は、評価指針と設計指針を分離し、評価指針として「設計の過程で必要となる、振動とそれに対する居住者の評価との関係を表す指標のみを評価基準として独立させ」、設計指針では「加振力や応答測定点の設定方法など」や「対象とする振動の性状が限定され、振動源ごとに蓄積され」る傾向があるためにそれを分離させたとのこと。
ただし、設計指針はまだ発刊されてはいません。

新評価指針では、鉛直では、住宅と事務所と評価の違いがあり、ほぼ2dBごとにランクが変化し、さらに住宅の方が事務所より2dBほどランクが厳しくなっています。また水平方向の評価方法では、評価は等間隔のランクではなく、また周波数も0.1Hzから30Hzまで幅広く存在しています。

また、非定常の振動についても評価方法が決められています。

鉛直方向では、JISC1510-1995の鉛直特性で重み付けられた振動値に対して、今回の指針では、時定数VL10msが55dB となるときの時間の合計とする、とあります。ただし振動が10秒以上継続する場合や1秒以内にA*10^(1/4)で補正された場合には定常的振動と考えます。
1秒から10秒までの振動については、A*=A×10^(((logT)-1)/4)で補正されます。
道路交通振動のような場合に、ほとんどの時間が55dB以上となる場合にはそのままで問題はないのですが、例えば半分が55dB 以下の場合などは上記の方式を用いることになります。
また床の衝撃振動で、一人歩行のような1秒以下で衝撃がある場合には、多少低減されることになります。ただし何人もの人が通り抜ける場合には低減されません。
またゴムボール落下のような(例えば5秒間隔など)、等間隔で振動が発生するような場合にも、多少振動が低減されることになります。

振動の低減効果があることは、何か目的があるような場合にのみ必要な気がします。例えば夜中にある滅多にない鉄道車両の走行振動などが、それに相当すると思われます。

弊社のように、実験などでゴムボールを落としたような場合には、実験結果を低減することなく、単に最大値を求めて、比較することが好ましいと思われます。
ただ、スラブの振動測定をたくさんしてきましたが、評価方法は今回の指針を元に修正する必要があると思います。

左から1991年および2004年の『建築物の振動に関する居住性能評価指針同解説』、
右が今回(2018)の『建築物の振動に関する居住性能評価基準・同解説』