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2021/11/22

夢枕公演 ユーラシアの夢のコンサート

かなり時間が経ってしまいましたが「夢枕公演 ユーラシアの夢」と題するコンサートが2021.6.24(木)に目黒のパーシモンホールの小ホールで行われました。ユーラシアの夢と題するだけあって大陸を横断するように、ペルシャから世阿弥まで幅広い内容でした。

最初はアミンという歌手のペルシャ伝統音楽の歌で、バックにペルシャの太鼓が低い音を奏でます。次に中村明一の尺八で、この尺八の音は中世のヨーロッパのリコーダのような音に感じました。またAyuo(高橋鮎生)の曲は、「紅楼夢」の英訳の歌詞と世阿弥の「松風」に曲を付けたものです。この曲は、小説や詩の言葉があって、それを支える音楽を作曲するという形は日本の伝統的な音楽、義太夫などの手法と似たものを感じました。出演者も先ほど述べたアミンはイラン人の歌手(東大のバイオエンジニアリングで修士、博士出身)、モーガン・フィッシャーはイギリス生まれ、キーボード奏者、また二十五弦箏は小宮瑞代、アコーディオンとベースギターと歌は上野洋子、ダフ(ペルシャの太鼓)などを演奏した立岩潤三、バークレーでジャズを学んだ尺八奏者の中村明一、作曲及びギターのAyuoの多彩なメンバーで、お客さんも外国人が多かったです。様々な国の特徴のある楽器や曲を組み合わせて、新たな世界観を表現していることが素晴らしかったです。



2021/07/28

牧の原の大興寺の鐘楼

今年は何度か仕事で静岡の牧の原に行く機会がありました。

すでにだいぶ前の話になりますが、3月の終わりに行った際、帰りがけに牧の原インター近くに大きなお寺があったので寄ってみることにしました。

大興寺というなお寺で、入り口に鐘楼がありその柱の左右に平家物語の冒頭、

「祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」と、

「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」

が書かれているのが目に留まりました。

鐘の声、これは音に関する言葉です。

「諸行無常の鐘の声」とは実際の音色はどんなものか、とふと気になりました。

お寺の鐘の音は、一般的にはゴーンという衝撃音の後に唸りを生じながら減衰していきます。

トレヴァー・コックス著「世界の不思議な音」のP.274に、

(この本からは以前にも引用してブログを書いたことがあります。)

教会の鐘を新たに鋳造するとき、西洋の鋳造所ではそのような震音を避けたいと考えるのがふつうだろう。ところが韓国では、この効果は音の質を決定する大事な要素と見なされている。

韓国の鐘と西洋との違いを唸りのある無しであると書いています。

私が以前に重慶の飛行場で買ったチベットのお土産の鐘も唸りが美しく、またタイのバンコクの暁の寺で買ったお土産の鐘も軽い音の唸りを生じます。

おそらく仏教に関係する鐘は唸りが重要な要素ではないかと思われますが、これは私が想像するに、人々の願いや思いを天国に届ける役割をしているものではないかと思います。

しかし個人的には、この大興寺のような鐘の音と、平家物語にある「祗園精舎の鐘の声」とは少し響きのイメージが違いました。

祇園精舎の鐘とはどのようなものなのかと思い、ネットで調べてみると、

祇園精舎の北西の一角には無常堂(無常院)というところがあり、僧たちの最後のホスピスのようなところだということです。そして臨終を迎えると建物の四隅にある鐘が鳴るそうで、それは腰鼓(ようこ)のような形で「頗梨(はり)」という水晶でできた小型の鐘と書かれているものがありました。

祇園精舎の鐘の声とは梵鐘ではないだろうと想像したことは正しかったように思いますが、真ん中がくびれた腰鼓の形をした鐘で、しかも水晶でできているとは想像もしていませんでした。

水晶でできた鐘の音は心地よい音だと想像しますが、実際どんな音だったのでしょう。

牧之原の大興寺周辺はお茶畑で、季節は桜の時期がほぼ満開でした。

大興寺の鐘楼

大興寺
    
周辺の茶畑

この写真のみ6月に行った時に撮ったものです
鐘楼左右に平家物語の冒頭が書かれています(一部薄くなっている)


2021/05/27

劇場や音楽練習室等の紫外線によるコロナ対策の検討

緊急事態宣言により、舞台や音楽関係には依然として厳しい制限がかかっている。

劇場の形態はいわゆる3密が特徴で、対策として座席は半数を上限とされ、入場時はアルコール消毒、検温、マスクも着用が厳守となっている。加えて換気が重要で、大型の劇場やホールの場合には、基本的に大規模に空調をしながらシステムの中で換気も行っている。

しかし、空調による換気を行っていても、咳等による飛沫が遠くまで飛んでしまうことも考えられるため、劇場では一般的に設置されている床下排気口からできるだけ早く排気することが望ましい。劇場は収容人員が多いため換気量は多いが、そのうち外気からの新鮮空気の割合は20~30%であるため(※)、空調稼動時にウイルスが循環することも考えられる。

そのため、可能であれば排気口の中で紫外線などによる抗ウイルス処理ができれば安心である。

※20210607追記:20~30%というのは一般的な数値であるが、現在オンラインで視聴できるJATETフォーラム2020/21の建築部会の講演 で、劇場は外気からの新鮮空気の割合は50~90%(一般的な事務所では20~30%)であると発表されている。)

紫外線によるコロナウイルス不活性化については確認されており、それを利用した装置もさまざまなメーカーで開発されている。

以前直接話を伺った(株)ハリマビステムでは、様々な場所で使用可能な高出力紫外線発生装置があり、殺菌灯・ファンを内蔵した装置にて室内の空気を循環させながら除菌するものである。実際に病院や学校、研究施設などで利用されている。

劇場ではこのような装置を空調機の排気口側に設置すると効果があるのではと思われるが、空間が大きく換気量も多いため、現在はまだ使用されている例を知らない。

また水銀ランプにかわる光源として紫外線LED(UV-LED)が実用化されたことも多数の製品化につながっている。

「深紫外線LEDは、人体や環境への影響も極めて少ないうえに、コンパクトで省エネ・長寿命という特長」があるとのこと。

高出力の深紫外線LEDを開発した日機装


その他、紫外線LED(UV-LED)を使用した空調システムのニュース等

前田建設と日機装が空調設備のウイルス除菌ユニット開発で提携、「深紫外線LED」で99.9%不活性化

室内空調システムに応用可能な新型コロナウイルスの除去不活化技術


弊社もかかわることが多い音楽練習室や録音スタジオなどは遮音が必要なため使用中に十分な換気がしにくい。また直接使用中の室内に照射すると人体に有害である場合がある(※人体に悪影響を及ぼす230nm以上の波長をカットした、222nm紫外線ウイルス抑制・除菌技術も開発されている)。その場合も空調の中での紫外線殺菌が効果的である。

仮に今後ワクチン接種が進み感染者が減ったとしても、より安心して使用するためには今後もそのようなシステムが必要であると考え、今後の設計の際には検討していきたい。

紫外線による殺菌装置は現在多数開発されており、いくつか調べてみたものを以下にご紹介する。


空気循環型の紫外線照射装置

ユーヴィックスTITANPOWER TP-F120 製造:サンスター技研
YABメモ)天井据え付け型で120m3まで対応と書かれている。JR西日本の特急列車にも採用されているとのこと。光触媒と紫外線で除菌・脱臭を行うとのこと。



 ②エアーリア 製造販売:岩崎電機
YABメモ)出力28Wで約1m3/min、 57Wで約1.7m3/minでとあるが、適用面積などは不明。紫外線ランプは装置内部に組込みで、床置きのタイプ。

 
製造: STERIL-AIRE社、販売:ステリルエアージャパン株式会社
YABメモ)循環式空気清浄装置:ウイルス・カビ・細菌・花粉に効く。現在3タイプあり、30畳用から、最大のもので300〜450m3/h、90畳:約165m2の空間の処理が可能。


UV空間除菌機中型IQフレッシャーZERO 販売:アイクォーク株式会社
YABメモ)適用床面積38畳まで。小劇場の客席、楽屋、稽古場などの中規模空間に良いと思われる。レンタル(株式会社六工房 )も行われている。


室内空気殺菌器:メーカー:フィリップス、販売:東芝ライテック
YABメモ)適用空間 80m3 置き型


直接照射型 紫外線照射装置


波長222nmをピークに持つエキシマランプに特殊な光学フィルタを組み合わせることで、ヒトに悪影響を及ぼす230nm以上の波長をカットした、222nm紫外線ウイルス抑制・除菌技術。用途:診療所の待合室の天井などに設置 


UV-C(紫外線C波)を利用した紫外線照射装置「エアロシールド」
「室内2.1m以上の天井付近で紫外線を水平照射し、自然対流を活用して空間全体の空気に働きかける構造により、人がいる空間でも人体に影響を及ぼすことなく、24時間安心・安全に空気環境の改善を行う」
YABメモ)ロフトなどの空間がある場合には人が存在しないようにする必要がある。また直接内装に照射されるので色褪せなどの不安はある。
適用空間 20〜50㎥
 


※2021.5.27現在の情報であり、現在進行形で多数の製品が開発されていると思われるため、常に新しい情報をご確認いただきたい。

2021/05/24

末広貴美子リサイタル 豊洲のシビックセンターホール

2021年4月7日(水)末広貴美子のメゾソプラノリサイタルがありました。末広さんの初めてのリサイタルで当初は昨年の4月8日に日暮里サニーホールで計画されていましたが、コロナの影響で今年の2月に延期となり、さらに定員も25名に削減となりましたが、さらに再延期しやっと今回の豊洲文化センターのシビックホールで開催できたそうです。4月7日はコロナの第3波が収束した後でしたが、今考えると第4波が始まる厳しいところでした。

曲目は、前半はよく聞くイタリア歌曲(イタリア古典・歌曲・オペラアリア)で、後半は森みどり作曲歌曲集「アドニスから手紙が来た」全曲です。実はこの「アドニスから手紙が来た」は建築家の黒川紀章の作詞です。後半の部は、豊洲文化センターホールの外側の面が可動で開き、目の前に明かりのついたレインボーブリッジや高層ビルが突然現れるという趣向でした。建築家の作詞ということを考えてのアイデアではないかと思います。歌もホールも楽しみました。黒川紀章の詩の本も記念に買って帰りました。


豊洲シビックホール外観




2021/03/05

旧富岡製糸場西置繭所の保存整備事業が新建築2021.3月号に掲載されました

今月号の新建築(2021年3月号)に旧富岡製糸場西置繭所の保存整備事業が特集されました。

弊社は富岡製糸場の西置繭所のガラスホールの音響設計を担当いたしました。

(昨年の音響学会にて発表を行っています。こちら。

富岡製糸場は1872年(明治5年)に建設され、2014年に国宝に指定されています。西置繭所の今回の工事は保存修理、整備活用、および耐震補強を一体にして行われたものです。

新建築の中の文化財建造物保存協会の斎賀氏の文章を一部引用してご紹介いたします。

「整備活用では、保存修理の方法に沿って、創業時の雰囲気をとどめたままの西置繭所を最大級に体感できるように工夫した。1階内部に鉄骨と特殊なガラスを構築した耐震補強を兼ねるボックスは、内側を新たな用途に用いながら、既存建物の内部空間をガラス越しに鑑賞できることを可能にした。」 

弊社は新たな用途に対して、可能な方法を音響的に検討いたしました。

床はフローリング、壁・天井はガラスのホールで音響反射面が平行に存在しているため、音響障害(フラッターエコー・音圧のばらつき)が起こりやすい形状であった。一般的には吸音材で調整するところであるが、吸音材をガラス面に設置することは西置繭所の内観を見る妨げとなることから視界に入る部分に吸音材は使わず、壁の一部を拡散体とすることを検討し、シミュレーションで最適な形状を検討した。

結果、音響障害は低減し、人や椅子などによる吸音を助けに、響きもあり音声明瞭度も確保し、講演やコンサートが可能となる設計となっています。

また本整備工事に関しては、昨年2020年に文化遺産の活用方法に関して日本イコモス賞を得ています。



2021/02/12

密閉でない劇場

新型コロナ対策としてあげられた3密(密閉、密接、密集)ですが、劇場というのはこの3密そのものです。従来はこの3密が劇場の盛り上がりに必要なものと考えられてきましたが、しかしこのコロナ禍で劇場やライブハウスは閉鎖されることが多くなってしまいました。

劇場関係者や音楽家、俳優たちは、いろいろ対策方法を見つけようとしています。

一番コロナ対策になるのはオンラインで公演する方法です。

当たり前ですがこれなら感染しません。

2021年のウイーンフィルのニューイヤーコンサートも無観客で、オンラインで観客から拍手が帰ってくる仕組みです。ウイーンフィルにとって初めての経験だそうです。しかしやはり観客がいないホールは異様な雰囲気です。

また観客が入る場合には、客席の距離を取り、換気の時間を設けたりする場合もあります。また歓声をあげることを禁止し、拍手だけが許可されています。


ふと思い出しましたが、インドネシアのバンドンには密閉空間ではない劇場がありました。Angklung Udjoという劇場で、壁はなく舞台と客席には屋根がかかっています。

以下の当ブログでもご紹介しています。

『2015年5/3~6に仕事でバンドンに行ったが、時間を見つけて、竹楽器のコンサートのAngklung Udjoに行った。舞台には、横浜ボートシアターの人形やお面に似た人形が並んでいた。別々の音階をもつAngklungをビブラフォンのように並べ、2.5オクターブの楽器もできる。そのコンサートが非常に素晴らしかった。子供が100名ほど出演してダンスや演奏をして盛り上げ、蛍の光を様々な言葉で歌ったり、また観客にも一人ひとり一つの音程の出るAngklungが渡され、それで全員で知られている音楽(例えばドレミの歌)を演奏したり、また最後は観客も巻き込んで輪になって踊った。観客の半分はヨーロッパ系と思われる人々であり、司会者はインドネシア語と英語で話をし、このAngklungで世界の平和を望んでいると言っていた。』

実際にその場にいた時には、観光バスの音などが入ってきて騒々しいと感じましたが、空調のことを考えるとこのほうがいいのかもしれないと思っていました。まさに今このコロナパンデミックの中では必要な環境だと感じます。

Angklung Udjo ダンス

Angklung Udjoの合奏

また昨年になりますが、横浜ボートシアターがインドネシアで行った公演『マハーバーラタ耳の王子』の動画を公開しました。改めてその劇場を見ると、やはり劇場の壁がありません。場所はジョグジャカルタ、ノトプラジャンのプンドポというところで、遠藤啄郎著『「場」の持つ力』によると、100年ほど前に王宮用の建物として造られ、結婚式や舞踊や音楽の演奏会場として使用されていたが、今は公民館として芸大の学生達の稽古や町の人達のガムランの稽古や演奏会に使用されている場所のようです。奥行き三十メートル、幅二十メートルの大きさで、屋根を支える大小の木の柱と石の床だけの建物で、ロビーも無ければ舞台用照明設備や音響設備、楽屋もなかったとのこと。

横浜ボートシアターが公演したノトプラジャンのプンドポ


日差しが強く、湿度の高い東南アジアの劇場ではこのように日差しを避けられ、通風も良い形が採用されていると思われます。今このコロナ禍で効果的な形式です。