2023年10月25日(水)18:30より横浜ボートシアターの公演「新版小栗判官・照手姫」が、船劇場でありました。2020年2月に亡くなった前代表遠藤啄郎の2度目の追悼公演です。その遠藤さんの代表作がこの小栗判官・照手姫です。しかも艀を劇場に改装した中で行われる公演で本来の形になっています。しかし残念ながらこの船劇場は誰でもがいける場所にまだ係留することができていないため、関係者だけのプレビュー公演となっています。近いうちに誰でもが参加できる場所に置けるといいと思っています。これは遠藤さんの希望でもあります。本公演は、出演者はチラシによれば8名となっていますが、劇の中の登場人物はたくさんいて、しかもその中でオペラのように、たくさんの楽器、上手にも下手にもある楽器を演奏する人も必要になります。まず舞台の上の人物になるときに、遠藤さんの作品によくある仮面を用います。最初の登場人物は若い夫婦で、そこで本主人公の小栗が誕生します。演奏する場合には、仮面をとって、かわるがわる様々な楽器を演奏します。また揚幕や引幕は最初からありません。また大道具は舞台の上に大きな石風のものが二つだけです。役者はその石の間から登場します。さらに客席側の中央にある下部へ行く通路からも登・退場します。舞台の下には役者が客席の下にある空間から舞台へ移動する通路も低いながらあります。これらの複雑な劇場の構造は、一般の劇場にはない、本日いらっしゃった舞台芸術家の堀尾さんのデザインです。
はじめに松本さんがお寺で使うような中型の大きさのお椀の形のリンの縁を棒でこすりながら小さな音を出していると次第に大きくなり、しかも唸りを生じてきます。これが多分今後の展開を示しています。小栗が石の間から登場したときは、太棹の篠笛をきれいな音で吹いて出てきました。実はいつもは音楽家の松本さんが主人公の小栗を演じていました。もちろんギターや太鼓(和太鼓ではない)や雅楽で出てくる和琴(わごん)らしい箏も演奏していました。俳優たちが大勢で合唱する場面があって、ハモっていました。ギターも生き生きしていて、太鼓も勢いがあって華やかでした。小栗は毒殺されて地獄に落ちるが閻魔大王に救われて、餓鬼の姿になって、地上に戻る。餓鬼は骸骨のような頭の人形で、俳優奥本さんが抱えて歩く。餓鬼の胸にはこのものを熊野の湯にいれろとの札がある。「一引き引いたら千僧供養、二引き引いたら万僧供養」と言いながら、多くの人々が何日もかけて餓鬼をひいて、最後に熊野の湯に入れ、小栗に再生する。この一連の場面がこの物語の言いたいことだと思われる。私にはとにかく前を向いて生きろと聞こえてきた。音楽も含めて生き生きしていた。演出は吉岡紗矢です。
しかし改めてこの強いメッセージを感じながら、今行われているウクライナとロシア、パレスティナとイスラエルの激しい殺し合いの戦争を思い浮かべてしまう。何とかならないか!こんな時代だからこそ必要なメッセージだと思う。
※六郷特別出張所区民ギャラリーで、元横浜ボートシアターの木村さんが仮面を展示していました。家が隣同士の絵本作家のことは書かれていましたが、横浜ボートシアターのことは書かれていませんでした。しかしこの劇団の仮面は人生に非常に強い印象だったに違いがありません。いくつか展示されていた仮面を一部以下に示します。