大阪の国立民族学博物館に行って特別展の本、「シルクロードの商人(あきんど)語り サマルカンドの遺跡とユーラシア交流」を購入してきた人から借りて読んでみた。その本の中に、シルクロードを通ってきた楽器や音楽、演劇について書かれていた。出版社は創元社。
この特別展のごあいさつ文を国立民族学博物館の館長の關 雄二氏が書いている。「本特別展は、ユーラシア大陸の十字路として栄えた中央アジアを舞台に、古代から現代にいたる交易と文化交流の歴史を、「商人」という視点から読み解く試みです。東西・南北を結ぶシルクロードは、単なる物流の道ではなく、宗教、芸術、音楽、技術、そして人々の生き方そのものを運んだ壮大な文化回廊でした。その中心的役割を担ってきたのが、国境や民族、信仰の違いを超えて往来した商人たちです。」
対象としている国は、ウズベキスタンを中心に、カザフスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギスなどの国だ。これらの国は1度、ソ連に併合されていた私は以前、カザフスタンの建築設計事務所IMAYO
CREATIONの今用さんに依頼されて、2008年にカザフスタンのアルマティとアスタナに行って、ドンブラ用のホールなどの音響設計の仕事する可能性があった。しかしリーマンショックが起こり、残念なことに仕事そのものがなくなってしまった。
また国立民族学博物館で『旅する楽器 南アジア、弦の響き』という企画展があり、そのブログを書いた。(http://yab-onkyo.blogspot.com/2019/05/blog-post.html)
ソグド人はシルクロードを通して、絹や絹織物、また綿や獣毛、さらに綿織物や絨毯などを運んだが、それに合わせて、楽器や仮面劇の伎楽など文化も運んだ。楽器では、正倉院に所蔵される箜篌(くご)(竪琴)や琵琶などが、影響を受けているものだ。また仮面芸能の伎楽は、中国、インド、中央アジアとシルクロードを通じてつたわり、正倉院には、伎楽面「酔胡王(すいこおう)」、「呉公(ごこう)」、「呉女(ごじょ)」などの面が納められていると。p.78にある伎楽「酔胡王(すいこおう)」の仮面を見ていると、迫力があって、仁王門にある仁王像の雰囲気と似ている。
先日 5月1日のNHKEテレの芸能きわみ堂で、伎楽についての新作があった。面の製作は、彫刻家・籔内佐斗司が担当したと。タイトルは「鯰(なまず)しずめ」で、主人公は大ナマズを押さえている鹿島大明神と香取大明神で、神無月にこの二人が出雲に行っている間に、留守を任されたえびす様が酒を飲んで、うたた寝をしている間に鯰が大暴れをするという話。この神様の二人は、中近東の人の顔とアフリカの人の顔のようだと説明していた。結構滑稽な話だ。しかも演じているのは子供たちで、昔の被り物の面が小さいので、こども用ではなかったかと推測したようだ。
仮面劇の伝統は、ひょっとこ面などを使った神楽や、能や狂言にも受け継がれているが、今では横浜ボートシアターの仮面劇にも受け継がれているように思う。
春分の日に行われるノウルーズ、これはペルシャ語で「新しい日」という意味だそうだが、ゾロアスター教に関連して生まれたが、今でもその祭りは続いている。ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス(クルグズスタン)、タジキスタン、トルクメにスタンの中央アジア5か国は、ソ連から独立する前後にノウルーズを公式の祝日に定めて盛大に祝うようになった。主要都市では、中心部の広場で行政主導の式典とコンサートが大々的に行われ、州、地区、村落でも祝祭が組織される。以前2024.03.27にノウルーズコンサートで、ドッタールの演奏者として駒崎万集を紹介していたが、ドッタールの奏者として、今回の特別展でも演奏したようだ。以下はペルシャのノウルーズというブログで示した。
http://yab-onkyo.blogspot.com/2024/03/nowruz.html ドッタールは2弦の楽器だ。私がなじみのあるドンブラやドタールも指ではじいて演奏するが、コブズは弓で演奏する。以下はウズベキスタンの2弦のドタールの演奏というブログでも駒崎万集が出演している。
http://yab-onkyo.blogspot.com/2023/07/2.html
今回の特別展において紹介されたシルクロードを辿った楽器については、日本ではクラシック音楽の中では全く使われていないものだが、ウズベキスタンのドッタールや、カザフスタンのドンブラなどは私にとっては大変身近なものになっている。今(2026.05.22)問題になっているアメリカ―イランの戦争の中で、イランの文化が否応なく注目をされる。その源流は紀元前から伝わるソグド人の文化だ。奈良の正倉院などには、それらの楽器や、伎楽の面が残っていて、とんでもない古い歴史を持っている。