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2022/03/02

ブルーモスクの絨毯

 

 2007年、トルコのイスタンブールで開催されたINTER-NOISE 2007に参加し、コンクリートスラブを床衝撃音用のゴムボールで加振することでスラブの1次固有振動数を求める方法について発表しました。この内容は下記のブログに書いています。(http://yab-onkyo.blogspot.com/2007/09/2007.html)。

 イスタンブールはトルコの西側で、ボスポラス海峡を挟んであり、かつてのオスマントルコの首都になります。ボスポラス海峡の南側はエーゲ海、北側には黒海があり、その周辺にはルーマニア・今注目のウクライナ・ロシア・ジョージアもあります。イスタンブールはヨーロッパとアジアの境界にも位置し、トプカプ宮殿やいくつかの有名なモスクがある観光地にもなっています。宿泊したホテルはボスポラス海峡のヨーロッパ側の旧市街にあり、ホテルのすぐ近くに立派なモスクがありました。それは一般名称がブルーモスク、正式名称はスルタン・アフメット・ジャーミーです。イスラム教のモスクは半球状の屋根がたくさん集まった特徴のある外観で、内部もその半球状の内側空間を形作っています(写真1,2)。インターノイズの会議が終わってから行ってみたところ、お祈りの時間に近いようで次第に人が集まってきました。モスクの内部にはブルーのタイルがはめ込まれていて、ブルーモスクの由来がここにあると思いました。床には絨毯が貼られていました。絨毯の継ぎ目をめくってみると、絨毯の下は板が張られていました。その時には単に仕上げの一部と思っていましたが、この床の仕上げによって残響を抑える役割があると最近気が付きました(図1に示す)。絨毯の下の板張りは、その下に多少の空間があることで低音域が吸音しやすいようになり、これによりモスクではお祈りが聞き取りやすくなります。隣接しているスイレマン大帝の奥さんヒュレットの霊廟を見に行きましたが、床仕上げは大理石で残響がかなりあります。ブルーモスクが竣工したのが1616年。竣工時に床がカーペットというのは確証が取れませんが、音響学的に言えば1900年のSabineの残響時間の理論を初めて用いたボストンシンフォニーの設計が室内音響の最初といわれていますので、それより300年も前にできたブルーモスクの床の絨毯が残響時間のためでもあれば、音響学の歴史をだいぶ遡ることになります。

 

                   図1 各種材料の吸音率の比較

  

        写真1 ブルーモスクの外観

         写真2 ブルーモスクの内観