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2023/10/30

ふね劇場での新版小栗判官・照手姫 公演

 20231025日(水)1830より横浜ボートシアターの公演「新版小栗判官・照手姫」が、船劇場でありました。20202月に亡くなった前代表遠藤啄郎の2度目の追悼公演です。その遠藤さんの代表作がこの小栗判官・照手姫です。しかも艀を劇場に改装した中で行われる公演で本来の形になっています。しかし残念ながらこの船劇場は誰でもがいける場所にまだ係留することができていないため、関係者だけのプレビュー公演となっています。近いうちに誰でもが参加できる場所に置けるといいと思っています。これは遠藤さんの希望でもあります。本公演は、出演者はチラシによれば8名となっていますが、劇の中の登場人物はたくさんいて、しかもその中でオペラのように、たくさんの楽器、上手にも下手にもある楽器を演奏する人も必要になります。まず舞台の上の人物になるときに、遠藤さんの作品によくある仮面を用います。最初の登場人物は若い夫婦で、そこで本主人公の小栗が誕生します。演奏する場合には、仮面をとって、かわるがわる様々な楽器を演奏します。また揚幕や引幕は最初からありません。また大道具は舞台の上に大きな石風のものが二つだけです。役者はその石の間から登場します。さらに客席側の中央にある下部へ行く通路からも登・退場します。舞台の下には役者が客席の下にある空間から舞台へ移動する通路も低いながらあります。これらの複雑な劇場の構造は、一般の劇場にはない、本日いらっしゃった舞台芸術家の堀尾さんのデザインです。

 はじめに松本さんがお寺で使うような中型の大きさのお椀の形のリンの縁を棒でこすりながら小さな音を出していると次第に大きくなり、しかも唸りを生じてきます。これが多分今後の展開を示しています。小栗が石の間から登場したときは、太棹の篠笛をきれいな音で吹いて出てきました。実はいつもは音楽家の松本さんが主人公の小栗を演じていました。もちろんギターや太鼓(和太鼓ではない)や雅楽で出てくる和琴(わごん)らしい箏も演奏していました。俳優たちが大勢で合唱する場面があって、ハモっていました。ギターも生き生きしていて、太鼓も勢いがあって華やかでした。小栗は毒殺されて地獄に落ちるが閻魔大王に救われて、餓鬼の姿になって、地上に戻る。餓鬼は骸骨のような頭の人形で、俳優奥本さんが抱えて歩く。餓鬼の胸にはこのものを熊野の湯にいれろとの札がある。「一引き引いたら千僧供養、二引き引いたら万僧供養」と言いながら、多くの人々が何日もかけて餓鬼をひいて、最後に熊野の湯に入れ、小栗に再生する。この一連の場面がこの物語の言いたいことだと思われる。私にはとにかく前を向いて生きろと聞こえてきた。音楽も含めて生き生きしていた。演出は吉岡紗矢です。

 しかし改めてこの強いメッセージを感じながら、今行われているウクライナとロシア、パレスティナとイスラエルの激しい殺し合いの戦争を思い浮かべてしまう。何とかならないか!こんな時代だからこそ必要なメッセージだと思う。

※六郷特別出張所区民ギャラリーで、元横浜ボートシアターの木村さんが仮面を展示していました。家が隣同士の絵本作家のことは書かれていましたが、横浜ボートシアターのことは書かれていませんでした。しかしこの劇団の仮面は人生に非常に強い印象だったに違いがありません。いくつか展示されていた仮面を一部以下に示します。




2023/10/17

安達朋博ピアノリサイタル

 20231014日(土) 開演19時より約2130分に、安達朋博のピアノリサイタルがサントリーホール大ホールでありました。最初の曲はバッハのパッサカリアとフーガで、オルガンの曲としてよく知られていますが、演奏された曲はピアノに編曲したもので、オルガンの低音がピアノでもよく響いていました。次はラフマニノフでショパンの主題による変奏曲です。前半は多少緊張していたせいか硬い雰囲気でした。幕間の後の後半はドラ・ペヤチェヴィッチのピアノソナタで、1915年の作品です。流れるような華麗な曲です。ただこの作曲時期は第一次世界大戦がはじまった時のようで、プログラムによると、それから刺激を受けているようで、従軍看護婦としても働いていたそうです。ペヤチェヴィッチはクロアチアの人で、安達さんは日本クロアチア音楽協会の代表を務めていて、ペヤチェヴィッチの音楽については造詣が深いとのこと。最後はリストのベリーニの歌劇「ノルマ」の回想で、オペラの劇的なところをとらえたものです。いずれも難しい曲で、特にラフマニノフの曲はむつかしそうな曲でした。アンコールはベートベンのエリーゼのためにとチャイコフスキーの瞑想曲。

曲が終わると安達さんがマイクを持って説明をしていましたが、その拡声用のスピーカは多分天井に1か所でした。1か所にしたのは、多分音声の明瞭度をあげるためではないかと思われます。富岡製糸場の西置繭所ガラスホールの拡声方法は、左右のスピーカがホールの端にあり、おたがい約25m離れたところにあります。

(以下に示す。https://yab-onkyo.blogspot.com/2023/10/150.html) このようなサントリーホールの例も参考にすべきと感じました。




2023/10/10

富岡製糸場 行啓150周年記念講演会・ピアノコンサート

 2023108日(日)1315分~1630分に富岡製糸場西置繭所多目的ホール(ガラスホール)で行われました。私はこのガラスホールの音響設計にかかわることができて、音響測定の結果を建築学会に発表することができました。

http://yab-onkyo.blogspot.com/2020/09/blog-post.html

音響設計の趣旨は、壁・天井のほぼすべてがガラス、床はフローリングでできているので、ほぼ音の反射性の材料でできている。しかも羊羹のような形の直方体となっており、いろいろ音響的な問題があるので、どのようにしてコンサートや講演や演劇に好ましい状態とするかというのがテーマでした。この音場を拡散音場として残響時間の計算をすると、幸いなことに天井が低いために、人間の吸音力が十分大きく、人が50名在席すれば、コンサートに好ましい状態となり、100名在席すれば講演にも好ましい状態になることがわかりました。問題は、長手方向は壁同士で、音が反射を繰り返すとエコーとなり、音声明瞭度を害することです。そこでこの妻壁の一部を上向きの反射性として、長距離の往復反射をほぼなくすように計画しました。

       写真:ガラスホール、下手側奥に音の反射板の入っているガラリが見える。

        写真:上向きの反射材の入っているガラリ、一部吸気口がある。


     写真:ガラリの部分の奥には、音を上に向けて反射させるための反射板がある。

            写真:中央には演台がある(ちょっと柱にかかっている部分)

写真:コンサート時、ピアノ2台、左奥には下手側のスピーカがある。ただしコンサート時は使用せず。

             写真:上手側のスピーカ(赤で囲む)

最初は富岡市の方が、本公演の富岡製糸場の明治6年(1873に行われた皇后・皇太后の行啓の意図についてお話をされ、次に塚原康子さん(東京藝術大学教授)によって、お二人のピアノ演奏や音楽との関わりについて、講演会がおこなわれました。内容はほぼ2時間にわたり、かなり具体的で、多岐にわたりました。明治天皇が京都から東幸したことからが始まって、ブリュナ夫妻が、西洋料理を供進したこと、奥様がピアノを弾じたことなど、昭憲皇太后が雅楽や箏を習ったこと、フェントンが作曲した君が代を聞いたこと(音として聞くことができた)、さらに能楽も習っています。芝能楽堂が明治14年に開かれたこと、さらにこの芝能楽堂は経営難から明治35年に靖国神社に移築されたことも講演されました。

講演のとき聴衆はほぼ100名、それなりに吸音材?は十分と思われましたが、実はスピーカが二台、部屋の端にそれぞれ置かれ、その間はほぼ25mもあり、そこから拡声された音は一方のスピーカに近いところで聞いた場合には、約25/340m=0.073秒で、別の方のスピーカからは73ms遅れて到達してしまうことになります。直接音から50ms以上遅れて聴こえる音はエコーになりやすいと言われているので、座る場所によっては、かなり遅れて到達してしまうことになり、実際にも音声明瞭度を害していたように感じました。




後半はピアノのコンサートです。演奏者は下山静香さん(桐生市出身)で、写真にあるようにアップライトピアノとプレイエルのグランドピアノの2台で演奏していました。曲の1音目からとてもきれいな澄んだ音で聞こえ人間のみが吸音材ですが、在席数が約100名とほぼ満席で、吸音材として十分なため、ガラス張りのホールとは感じられませんでした。音響設計をした立場からは正直言ってほっとましました。


 






2023/10/05

ウクライナへの祈り 日宇アーティスト達の饗宴! Vol.3のコンサート

 ウクライナへの祈りというコンサートは、2023101日(日)1400より、慶応義塾大学協生館2Fの藤原洋記念ホールであった。私にとって初めて行く劇場である。

前半の3曲はヴァイオリンとピアノの曲で、朗読を最初に行ってから演奏が始まった。ピアノとヴァイオリンの音のバランスがよく、よく響いて聴こえた。

後半は俳句朗読の後、バレエ、サキソフォン、合唱、さくらさくらVer.など多くの人たちが出演して賑やかに公演した。アンコールはウクライナ民謡(よく知る歌)だった。

その後、あいさつに立った人が、ウクライナではロシアと戦争中であるが、バレエやコンサートを普段のように行っている。空襲警報がなると地下に避難するような状態であるにもかかわらず、バレエやコンサートは大事にされているとのこと。心の安定のためには音楽や演劇は多分必要なことと思う。

今回のコンサートでは、舞台後部の壁ではなく、スクリーンが出てきて、ウクライナの現在の状況をスライドで映し出していた。このことでウクライナの現在を我々につなげることができたと思う。

演奏が行われた慶応義塾大学の藤原洋記念ホール(以下の写真)はきれいな劇場である。音響設計もされており、舞台の天井が高いにもかかわらず、舞台音響のために、音の返りのための庇(リブ)が壁についており、多分演奏しやすいように思う。収容人員は約500席、舞台後壁の壁は開放し、外部が見えるようになるとのこと。

舞台後壁が開いて後ろの景色が見えてびっくりしたのは、赤テントの公演の時、舞台の後ろの幕が開いて、超高層ビルの前で、重機が人を載せて回転していたこと。そのほか豊洲シビックホールの日中友好記念コンサートで、レインボーブリッジの照明が見えたこと、姫路城の前で平成中村座の天守物語公演で、舞台後壁が開き、天守物語の舞台になった姫路城が目の前に現れる場面(テレビで放映)、いずれも舞台と現実が一体となったような雰囲気が得られていた。

 最近放映されたNHKESのクラシック音楽館では、バッハの無伴奏チェロ組曲をスイスの氷河を舞台にして、地球環境を踏まえて演奏していた。この場合にはチェロの演奏は室内音響の効果は無視して、環境とのかかわりをむしろ重要しているように思う。さらに森の中での演奏も適度な木々からの反射が得られ、室内音響のような響きを感じ、コンサートの可能性があるように思う。

                写真 劇場がはねた時に撮影した。





2023/09/25

ヴィトルヴィウスの建築論(VITRUVIUS TEN BOOKS ON ARCHITECTURE)

今年5月に「キルヒャーの普遍音楽と純正律」というブログを書いたが、キルヒャーがギリシャ時代は素晴らしかったというので、ヴィトルヴィウスの建築論を読んでみた。

以下は「キルヒャーの普遍音楽と純正律」というブログを示す。

http://yab-onkyo.blogspot.com/2023/05/blog-post_31.html

 ヴィトルヴィウスは紀元前8070年ころから紀元前15年以降、共和政ローマ末期から帝政ローマ初期に活躍した建築家で、『建築について、建築十書』を著した。文章の中では、ギリシャ時代のこともローマ時代のことも書かれている部分がある。その文章のBookⅤの建築音響の部分を要約した。この建築音響のことでは、円形劇場の立地やドレミファのHarmonicsや音符を示す五線譜も書かれている。観客の階段を使っての安全のための避難の方法や、響く壺の設計方法(たぶん劇場の各場所で音を補強し、明瞭度を上げるために開発したと思われる。残響の補強のためではない。)やエコーが音響障害になることや、ギリシャの劇場やローマの劇場の違いなどが書かれている。現代のような数式はないが、音響の分野でも科学的な根拠がわかる考え方である。 

以下はVITRUVIUS TEN BOOKS ON ARCHITECTUREの英訳本の目次

Table of Contents

Ten Books on Architecture

Table on Contents

Preface to “Ten Books On Architecture

Book

Preface

Chapter Ⅰ:The Education of the Architect

Chapter Ⅱ:The Fundamental Principles of Architecture

Chapter Ⅲ:The Departments of Architecture

Chapter : The Site of a City

Chapter : The City Walls

Chapter:The Directions of the Streets: With Remarks On the Wings

Chapter : The Sites For Public Building

Book

Introduction

Chapter:The Origin o the Dwelling House

Chapter: On the Primordial Substance According to the Physicists

Chapter: Brick

ChapterⅣ:Sand

Chapter:Lime

ChapterⅥ:Pozzolana

ChapterⅦ:Stone

ChapterⅧ:Methods of Building Walls

ChapterⅨ:Timber

ChapterⅩ:Highland And Lowland Fir

Book

Introduction

ChapterⅠ:On Symmetry: In Temples And In the Human Body

ChapterⅡ:Classification of Temples

ChapterⅢ:The Proportions of Intercolumniations And of Columns

ChapterⅣ:The Foundations And Substructures of Temples

ChapterⅤ:Proportions of the Base, Capitals And Entablature In the Ionic Order

Book

Introduction

ChapterⅠ:The Origins of the Three Orders, Proportions of the Corinbian Capital

ChapterⅡ:The Ornaments of the Orders

ChapterⅢ:Proportions of Doric Temples

ChapterⅣ:The Cella And Pronaos

ChapterⅤ:How the Temples Should Face

ChapterⅥ:The Doorways of Temples

ChapterⅦ:Tuscan Temples

ChapterⅧ:Circular Temples And Other Varieties

ChapterⅨ:Altar

Book

Introduction

ChapterⅠ:The Forum And Basilica

ChapterⅡ:The Treasury, Prison, And Senate House

ChapterⅢ:The Theatre: Its Rite, Foundation And Acoustics

ChapterⅣ:Harmonics

ChapterⅤ:Sounding Vessels In the Theatre

ChapterⅥ:Plan of the Theatre

ChapterⅦ:Greek Theatre

ChapterⅧ:Acoustics of the Site of a Theatre

ChapterⅨ:Colonnades And Walks

ChapterⅩ: Baths

ChapterⅪ:The Palaestra

ChapterⅫ:Harbours, Breakwaters, And Shipyards

Book

Introduction

ChapterⅠ:On Climate As Determining the Style of the House

ChapterⅡ:Symmetry, And Modification In It to Suit the Site

ChapterⅢ:Proportions of the Principal Rooms

ChapterⅣ:The Proper Exposures of the Different Rooms

ChapterⅤ:How the Rooms Should Be Suited to the Station of the Owner

ChapterⅥ:The Farmhouse

ChapterⅦ:The Greek House

ChapterⅧ:On the Foundations And Substructures

Book

Introduction

ChapterⅠ:Floors

Chapter2The Slaking of Lime For Stucco

ChapterⅢ:Vaultings And Stucco Work

ChapterⅣ:On Stucco Work In Damp Places, Decoration of Dining Rooms

ChapterⅤ:The Decadence of Fresco Painting

ChapterⅥ:Marble For Use In Stucco

ChapterⅦ:Natural Colours

ChapterⅧ:Cinnabar And Quicksilver

ChapterⅨ:Cinnabar(Continued)

ChapterⅩ:Artificial Colours, Black

ChapterⅪ:Blue, Burnt Ocbre

ChapterⅫ:White Lead, Verdigris, And Artificial Sandaracb

ChapterⅩⅢ:Purple

ChapterⅩⅣ:Substitutes For Purple, Yellow Ocbre, Malachite Green, Indigo

Book

Introduction

ChapterⅠ:How to Find Water

ChapterⅡ:Rainwater

ChapterⅢ:Varius Properties of Different Waters

ChapterⅣ:Test of Good Waters

ChapterⅤ:Levelling And Levelling Instruments

ChapterⅥ:Aqueducts, Wells, And Cisters

Book

Introduction

ChapterⅠ:The Zodiac And the Planets

ChapterⅡ:The Phases of the Moon

ChapterⅢ:The Course of the Sun Through the Twelve Signs

ChapterⅣ:The Northern Constellations

ChapterⅤ:The Southern Constellations

ChapterⅥ:Astrology And Weather Prognostics

ChapterⅦ:The Analemma And Its Applications

ChapterⅧ:Sundials And Water Clocks

Book

Introduction

ChapterⅠ:Macines And Implements

ChapterⅡ:Hoisting Machines

ChapterⅢ:The Elements of Motion

ChapterⅣ:Engine For Raising Water

ChapterⅤ:Water Wheels And Water Mills

ChapterⅥ:The Water Screw

ChapterⅦ:The Pump of Ctesibius

ChapterⅧ:The Water Organ

ChapterⅨ:The Hodometer

ChapterⅩ:Catapults Or Scorpiones

ChapterⅪ:Ballistae

ChapterⅫ:The Stringing And Tuning of Catapults

ChapterⅩⅢ:Siege Machines

ChapterⅩⅣ: The Tortoise

ChapterⅩⅤ: Hegetor’s Tortoise

ChapterⅩⅥ: Measures of Defence

 上記目次にあるように、本の内容は、都市の敷地、城壁、公共建築、住宅、建築用の材料、寺院、ドーリア式、イオニア式、コリント式などの3つの様式、そしてBookVで、劇場、音響、ハーモニー、劇場に置いた響く壺、劇場の計画、劇場敷地の音響、風呂、造船所、BookⅥ以降は住居、漆喰などの建材、水について、水道橋や井戸、月の満ち欠け、占い術、天気予報、惑星や月、機械、巻き上げ機、水を汲み上げるエンジン、などをかなり具体的に書いている。

BookⅤのChapter The Theater: Its Site, Foundation and Acousticsでは、劇場の立地について、観客は上演中、劇を楽しんで動かないことが多く、もし劇場が不健全な風を受けたり、不健全な地域から風が吹いてくると健康を害することになる。劇場が南向きの場合には、劇場が熱せられて、体に良くない。劇場の横に横断する中通路によって、舞台から音声が遮られないように、上段の座席と舞台に直線を引いて、座席の角度を調節する必要がある。劇場の客席からの出入口は数多く、幅広く作る必要がある。それぞれを接続する必要はないが、直線的にして、避難の時には混雑しないようにしなければならない。

声は舞台から円盤状に伝搬をし、伝搬に際し、障害物が無いようにしなければならない。障害物があるとそこで反射して伝搬を妨げてしまう。また音声は水平だけでなく、斜め上方向も伝搬する。したがって障害物がない場合には、下段の人も上段の人も万遍なく声は伝搬する。また古代の建築家は、正規の数学理論や音楽理論によって、舞台上で発せられるすべての声について、倍音(Harmonics)を応用することで、聴衆の耳に明瞭に、かつ甘美に届けられるようになった。

ChapterⅣ:Harmonicsは音楽科学のあいまいで難しい分野で、アリストクセノスの著作からできる限り明確にそれを説明している。声は高くしたり、低くしてピッチを変えるときに、二種類の動きがある、一つは連続的に、もう一方はは間がおかれる。連続的な声は、ある境界で、またはある特定の場所で静止しない場合は、正確には明確でないが、ピッチが違うことは明らかです。一定の間隔でピッチを変える場合は、変える境界では変化がわかるが、中間点では不明瞭である。テトラコードなどの音符について、精密な説明がある。音程の譜面が載っていて、それぞれに全音と半音に分けて記名されている。いまの音符の読み方ではファ、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソ(♭)、ラ、シ、オクターブ変えてシ、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、の譜面がある。またそれぞれにはギリシャ語の名前がついているが、これが何を意味するかはよく分からない。Proslambanomemos, lichanos hypatonparthypate meson, lichanos meson, trite synthemmenon, paranete synhemmenon, trite diezeugmenon, paranete diezeugmenon, trite hyperbolaeon, paranete hyperbolaeon

                                                  図 楽譜 p.146から引用

(※以下は「音律を含む音に関する歴史年表」のブログで、1020年に楽譜の発明とある。

http://yab-onkyo.blogspot.com/2022/12/blog-post_15.html●1020 多分この楽譜は英訳時に付け加えたものか?それともギリシャ時代から楽譜はあったのか?) 

ChapterⅤ: Sounding Vessels In the Theatre(劇場で響く壺)について書かれている。(19世紀のヘルムホルツの考え方はここからきているのではないかと思ってしまう。)数学的原理に対応して、劇場の大きさに比例して青銅の壺を作る。音に触れると互いに、4度や5度、やさらに2オクターブ上の音を奏でる。さらに劇場のこの壺を座席の間に隙間を作り、音楽の法則に従って、壁のどこにも触らずに設置し、さらに壺の周囲はどこにも触れず、上部には余裕が必要。さらにそれらの壺をさかさまに設置し、ステージに面する側で、0.5feet以上の高さの楔で支える。

They should be set upside down, and be supported on the side facing the stage by wedges not less than half a foot high. Opposite each niche, apertures should be left in the surface of the seat next below, two feet long and half a foot deep.

                       図 座席の下に入れる音声強調用の響く壺および配置(※文章から推定)

響く壺の配置は、劇場のサイズがそれほど大きくない場合は、中腹に水平範囲をマークし、その中に 12 個の等しい間隔をあけて 13 個のアーチ型のニッチを構築し、それぞれの壺の共鳴周波数を決めて配置する(この部分は意訳)。声はステージの中心から発せられ、さまざまな器の空洞に接触するにつれて広がり、それらに衝突し、音の明瞭度が増していきます。

半音階の音程では、自然な音の調和を形成する他の音がないために、円弧上の中央に響く壺を配置してはいけない。 これらの原則を実行したい人は、アリストクラテスによる音楽の法則にのっとって実行すれば済む。ローマでは毎年、たくさんの劇場ができてきているが、そのほとんどが公立劇場は木造で、それらは共鳴周波数(※現在では木が吸音する)があるに違いない。竪琴に向かって歌を歌うとき、更に高い音で歌いたいときには、舞台の折り戸に向かって向きを変えて歌うのを見ることができる。劇場が共鳴しない(?)硬いレンガ(mesonry,石や大理石で作られているときには、“echea”の原則を適用する必要がある。

(※石などで作られた劇場は野外の円形劇場を指すと思われるが、ローマにある劇場は木造だそうであるが、雨のことを考えると屋根があるのか気になる。屋根があると日本の芝居小屋と似たかたちとなる。またはシェークスピアの劇場のように、舞台と客席の上には屋根があるが、平土間の上には屋根がない形もあるかもしれない。)

この青銅の壺は、ローマだけでなく、イタリアの地域およびギリシャにもたくさん使われている。Lucius Mummiusがコリントスの劇場を破壊したときに、その青銅の壺をローマに持ち込んで、それを売ったお金でLuna神殿に奉納した。また多くの熟練した建築家が小さな町で劇場を作るときには、資金力が無かったので、粘土でできた同様に共鳴する壺を、原則に基づいて配置し、有益な結果を生み出した。

ChapterⅥ:劇場の計画、劇場の主の中心を固定して、底部の外周の線を引き、この円に内接する正三角形を4つ描く。この中の一辺がスケーネ(scaena,舞台背後の壁)の位置とし、それと平行な中心を通る線で、プラットフォーム(舞台)とオーケストラを分離する。

 

                                      図はTen Books on Architectureのp.152から引用

 この舞台はギリシャのものよりも低く作る必要がある。オーケストラには議員も座り、舞台で演奏するから、オーケストラに座った人が舞台にいるすべての人を見る必要がある。そのためにはこの舞台の高さは5feetを超えてはいけない。観客席の断面の勾配は、少なくとも最初の横断通路で分割されるべきである。 円周に沿ってある三角形のその角度を、二つの階段の間で、階段の方向で決める。この上に、上部の断面が下部の断面の中間に配置され、通路が交互に配置される。 階段の方向を示す下部の角度は(C, E, F, G, H, I, D)7つある。中央の角度の反対側には、Royal DoorK)があるべきである。観客席の段差は、高さが1feetに手に平一つ分以下、または1feet6本の指を超えてはならない。階段の幅は2.5feet以下または2feet以下とすべきである。

座席の最上部に立つコロナ―ド(列柱)の屋根は、スケーネの最上部と同じ高さにする必要がある。それは声が最上部の列および屋根まで、同じ大きさ(power)で到達するべきであるからである。スケーネの長さはオーケストラの直径の倍でなければならない。柱の台座の高さはステージの高さから始まって、円環などを含めてオーケストラの直径の1/12、その台座の上の柱の高さはオーケストラの直径の1/4、台輪と装飾品は柱の高さの1/5にすべきである。

劇場ではほぼ対称性とするが、現実には段、湾曲した横通路、欄干、通路、階段、舞台、法廷その他は実用性を重要視して考慮すべきである。小さな劇場でも大きな劇場でも同じサイズで作る必要があるものもある。建築家に実務経験があり、賢く、また技術があれば材料の不足などでも応用が利く。 スケーネの中央には王宮のような装飾された両開きのドアがある。その左右には客間のドアがある。その先には、ギリシャ人が「лεqiάиτot」と呼ぶ回転する3つの装飾面がある装飾装置がある。劇が変更されるとき、または突然の雷鳴とともに神々が登場するとき、これらは回転し、異なる顔を見せる。背景図には一つ目は悲劇、二つ目は喜劇、三つ目は風刺と呼ばれる3つの種類がある。悲劇の背景には柱や3角形の切妻壁(pediments)や彫刻や王にふさわしい物で施される。喜劇の背景はバルコニーや景色の良い一連の窓がある普通の住居、風刺は木や洞窟や山や素朴な物体を風景として装飾されている。(多分これらはかなり大きなものと思われる。)

Chapter:ギリシャ劇場は、建設規則をあらゆる点で従う必要がある。またギリシャ劇場は三つの中心がある。一つは広々としたオーケストラと、より後方に設置されたスケーネ、奥行きの浅い舞台がある。

Chapter : 劇場の音響学では、劇場に対する音響学は多大な労力と技術で作られたもので、最新の注意をもって対処する必要がある。劇場では声が穏やかに下降し、不明朗な意味を伝えないように、また音を跳ね返さないように注意する必要がある。最初に発せられた声が反射してエコーとなり、最後には二重になって聞こえ、後続の声を阻害するような場所を作らないようにしなければならない。子音ははっきりとした明瞭な音色で耳に届けることができる。このように劇場に注意深く設計が行われていれば、声は完全に劇場の目的に適うものとなる。ギリシャでは劇場の平面は四角で設計されているのに対し、ローマの劇場は正三角形でデザインされている。これらの指示に従う人は、完全に正しい劇場を施工することができる。

※坂本龍一著 「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」のp.209に「以前にも話題にしたギリシャの円形劇場は、今から2000年近く前につくられた建物なのに、音の響き方がとても良かった。結局、使い勝手の良し悪しは、技術というよりも設計者がどれだけ深く利用者の立場で考えているかによると思います。」とあった。多分これは設計者がどれだけ深く利用者の立場を考えただけでなく、VITRUVIUSの著作なども影響していると思う。坂本龍一がこの円形劇場の音の響きがよかったとあるのは、どう良かったのかもう少し知りたかった。

2023/09/22

片山杜秀の『蛙鳴梟聴』の記事  西村朗と坂本龍一 西洋に対抗 相反したアジアの音

片山杜秀の『蛙鳴梟聴』の記事は 朝日新聞2023.09.18(月祝)に載った。冒頭は、『西村朗が逝った。坂本龍一も春に亡くなった。中略、同時期に東京芸術大学音楽部部で学んだ。そして、2人ともアジアを背負った。』『西村の出世作はバリ島の伝統音楽に取材した「ケチャ」だろう。』『坂本が中略知られたのは大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」。ジャワ島が舞台だ。曲もインドネシアの音楽を意識している。』『どうも2人は小泉流の世界観に育てられたきらいがある。』 

ケチャとは、チャチャチャチャと結構力強く歌うが、単なる繰り返しだけでなく、ところどころでさらに大きくなったりして、変化する。何か動的な感じがする。これを記事では多分「アジア的ヘテロフォニー」と呼ぶのかもしれない。

坂本龍一のMerry Christmas Mr. Laurenceを篠笛で、ほぼ毎日吹いている。非常に抑えたリズムであるが、わずかに少しずつ変化している。それがいつも新鮮に見える。これをアジア的ヘテロフォニーというものかどうかは分からないが、西洋のクラシック音楽とは違うものとは感じる。

片山杜秀の記事のタイトルは「蛙鳴梟聴」(アメイ キョウチョウ)で、一般的には「蛙鳴蝉噪」(アメイセンソウ)で、蛙が鳴き、蝉が騒がしいという真夏の一般的な騒がしい情景で、「くだらない議論」という意味で使われるようですが、片山杜秀の記事の場合は「蛙鳴梟聴」で、その意味はよくわかりませんが、直接は蛙が鳴き、フクロウがそれを聴く、という意味だと思います。普通考えると蛙が鳴いているのを聞いて、フクロウがそれを確認し、捕まえて食べることを言っているような気がする。ただし私には深山幽谷の状態、すなわちヨーロッパのクラシック音楽が漂っている中で、その他の音楽も漂っているような感じです。「Merry Christmas Mr. Laurence」を篠笛で吹いていると、これからの新しい音楽の世界が漂い始めたような気がします。

2023/09/15

うたごえ喫茶『ゴンドラの唄』のグループの九月例会に参加

 日程:912日(火) 14時から16

場所:久我山会館 2F12会議室(井の頭線の久我山駅から徒歩約1分)

参加者は15名ほど。年代は7080歳ぐらい。

本来の会のいつものやり方は、ビデオをつかって、画面の歌詞に合わせて歌うものであったが、一部をピアノの伴奏に合わせて、歌を歌うことにした。さらに篠笛を加えて、バックアップすることにしたようだ。私の参加するピアノと篠笛の伴奏の曲は、『里の秋』、『小さな秋見つけた』、『赤とんぼ』の三つの唱歌である。これらの唱歌はヨーロッパのクラシック音楽を基にしている曲であるが、私が用いている篠笛はお囃子用の篠笛で、音程がクラシック音楽のものとは、わずかながら異なっている。ただ演奏すると大きな違和感はなく、新しい曲として、つかんでいけるような気がする。特に篠笛は太鼓と合わせて、お囃子を行う場合には、日本の伝統的な側面があるが、ピアノと篠笛の合奏の場合には、単に音楽が好ましいかどうかで判断ができるような気がする。