テーマ:Knowledge and Practices of Architectural Acoustics of Ancient Theatre Design,
Focusing on “The Ten Books on Architecture” by Vitruvius
この論文は元東工大の特任教授の清水さんから頂いたものです。本文は全て英語で書かれているのでびっくりです。それを、Google翻訳を交えて読んでみました。
主題はVitruviusの劇場設計についてで、意義の項目で、『建築は、技術的な側面と美的・文化的な側面を別の学問として研究されることが多い。、、、建築音響設計には、1) 波などの物理的現象としての音、2) 建築設計における音の応用、3) 音の心理的印象という3つの主要な研究分野がある。しかし、これらの分野が単一の学問分野として扱われることはまれである。しかし、ヴィトルヴィウスが生きた古代ローマでは、そのような区別は極めて稀であった。』とあった。
吉田さんの問題意識の中に、建築は技術的な要素と文化的な要素を別々に研究することが多く、音響設計でも物理的な面と心理的な面を別々に研究していることが多いと。たしかに大学の研究室ではそのような分野ごとに分かれているように思う。また音響学会でも分野ごとに分かれて発表している。しかし数年前に私も参加した東大建築学科の建築環境の森下先生の研究では、森の効果を医学的な立場から、心理学的な立場や音楽的な立場や音響的な立場から合同でかかわることも行っている。 また以前当社にいたアントニオさんは、グラナダ大学の4年生の時には、四川大地震の時に崩壊する建物から発生した超音波の研究をしていて、大学院を卒業してから、東工大の研究者として、飛行機の破壊するときに発生する超音波の研究をしていた。現在は、わが社を経て5年ほどになっているが、イギリスの音響事務所のRSKで、タンザニアの山の変形時(多分地震時または地滑り時)に発生する超音波の研究をしているようだ。いずれも音響技術だけでは解決できない分野になっている。建築音響の分野では、Sabine以降、残響時間の求め方や反射音の構造の研究が盛んで、ヨーロッパのクラシック音楽を対象に好ましいコンサートホールについて研究してきた。ただ最近では電気音響を用いて、ギリシャ劇場のタイプでクラシック音楽を演奏する例や、教会の中でクラシック音楽などを演奏する例もみられるようになった。さらに和太鼓やオペラや合唱やガムランや歌舞伎や人形浄瑠璃などのために室内音響もテーマになるのではないか。多くが学際的なテーマだ。
さらにピタゴラスがつくった音律、いかに唸らないかで出来た音律が最初で、一般的にはさらに、この後ヨーロッパの中世に純正律が出来て、その後クラシック音楽が作曲されるようになったが、現在では移調の容易さから平均律に変化している。ただこれらのことについては吉田さんの論文には出てこなかったが、ピタゴラスの後にAristoxenus(BC375~300)がElements of Harmonyという本を書いたとのこと。このHarmony はクラシック音楽ができる前のドミソの和音のことではなく、ギリシャ音楽の基本構造はテトラコルド(tetrachord)から成り立っているとのこと。以下テトラコルでについて、論文内のグラフを引用した。ファから高い方のファまでで、1オクターブの中を、赤い4つの音を示している。
別の本、Henry S. MacranによるThe Harmonics of
Aristoxenusの本によると、テトラコルドの4度音程は、ギリシャ人の耳が境界音の関係を即座に把握できる最小の音程であり、音楽的概念を間接的に知覚するには未熟のためとあった。どんな曲であったのか気になるところである。
またギリシャ劇場の椅子の下に置かれているSound Vesselは『劇場が木で作られている場合は、木材が共鳴するため、Sound
Vesselは不要であると主張している。彼が木材の吸音特性とSound Vesselのどちらを認識していたかは定かではありませんが、両方が音の明瞭性に与える影響を認識しており、その結果としてこの指示を出した可能性があります。』 確かにギリシャ劇場は円弧上に拡がる椅子による客席空間やスケーネなどによって、残響感がある。その影響を減らすためとも考えられるが、正確には目的はよくわかっていないようだ。このことは日本の能舞台の下に置かれている大きな甕も似たようなことがある。
音楽のエトス理論は、アリストテレス、プラトン、その他の哲学に組み込まれた。この理論は、音楽には特定の「気質」に影響を与え、人間の精神の最も深いところまで浸透する力がある、さらに古代ギリシャとローマでは、音楽は個人に大きな影響を与えると信じられ、この概念は教育と政治に適用されたようだ。ヴィトルヴィウスは、音は空気を球形上に伝搬していることや客席の段には上段にでっぱりを付けて、反射音が得やすい状態にしていることや、途中の横通路より上の段も客席の勾配を直線で結べるように考えたり、残響時間をスケーネ部分の空間の残響時間音の長さを利用して、ヴィトルヴィウスによれば劇場のオーケストラの部分で役者が演技をおこなったり、合唱やダンスを行ったりしていたようだ。のちにEringがスケーネの前の空間と客席の空間との連結空間を実験して、影響を受けていることが確認できたようだ。
ヴィトルヴィウスはギリシャ時代から音についての理解はかなりあって、公共建築としての劇場を設計していたようだ。吉田さんはこのヴィトルヴィウスの世界のなかで、広く深い世界にいられたようだが、現在の建築設計では、深く広い建築設計の分野に、さらに耐震設計を含む構造技術的なこと、設備技術的なこと、環境・音響技術的なことなどがそれぞれ奥深く存在している。最近、ベルリン工科大学にいたクレメンスさんは、日本の芝居小屋や明治時代のホールの音響の研究をしてドクターを取得したが、昨年の暮れの手紙では、世界の海洋音響の仕事で、世界を回っていると言っていた。吉田さんにとって、改めて次はどんなことがテーマになるのかじっくり考えて決めていく必要があるようです。