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2007/05/07

木造賃貸アパートの床衝撃音

某木造賃貸アパートの設計にあたり、設計者の方から床衝撃音についてご相談をいただき、対策を行い、先日竣工後測定を行った。
木造アパートの床衝 撃音の音響性能の目指すところは、住宅性能表示制度上の最低ランクの相当スラブ厚11cm(ばらつきを考慮したLH-65に相当)であ る。しかしこの最低ランクを一般の木造アパートで実現することは非常に難しく、木造アパートでは住宅性能表示制度で評価された例はほとんどないと考えられ る。この制度において、相当スラブ厚11cmの床構造の「みなし仕様」の例は、例えば、床側はフローリング16mm以下、モルタル厚35mm以上、パー ティクルボード厚15mmを2枚、天井側は、床と別構造で、天井を支持し、石膏ボード12.5mmを2枚張るといった重量のある仕様である。これに対し本 物件は、床はフローリング15mm、アスファルト系制振材厚8mm、ベニア厚28mmを井桁に組んだ大引の上に配置、天井は床とは別構造で、石膏ボード 12.5mmを2枚張りとなっている。これは一般的な木造アパートよりも相当重量床衝撃音対策を施した仕様であるが、それでも竣工後の2室の重量床衝撃音 の測定結果は、それぞれLH-70とLH-75となり、LH-65には今一歩必要であった。みなし仕様と比較して面密度が小さいため、目標性能には到達が 難しいことが予想できるが、面密度をこれ以上増すことは構造的にも不利であるため、なんとか床剛性を上げたり、床面で音が発生しにくい方法などで工夫をす る必要がある。
いずれにしても、木造賃貸アパートだから音響性能はどうでもいいということではなく、出来る限り性能を向上させる努力が必要と感じ ている。また本建物の大 きな特徴は、南側は大きな窓と玄関扉があるため耐震壁が設けられず、この南側だけは特殊な木造ラーメン構造となっている。平井設計工房が開発した、この新 しい工法を用いることで、壁の無い開放感のある木造の建物の設計も可能となる。

設計:平井設計工房、施工:東聖ハウスシステム