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2024/06/03

イリャン・チャンの肖像(portrait of Il-Ryun Chung)という名のコンサート

 「イリャン・チャンの肖像」とは、内容がわかりにくいので、イリャン・チャンの作曲した音楽とした方が具体的で、まだわかる。また副題は、韓国伝統と現代音楽の邂逅というものだが、韓国の伝統的な楽器を用いた現代音楽とした方がはっきりしている。ただしその中心の楽器はマリンバと思われる。韓国の伝統楽器ではない。マリンバに太鼓のチャングと横笛のデグムが加わった形だ。イリャン・チャンの音楽は、伝統的なハーモニーやメロディがなく、リズムも絶えず変化している。このイリャン・チャンの曲にはマリンバが多分もっともあっていると思う。

コンサートは531日(金)、場所は神奈川県立音楽堂、演奏者は加藤訓子(かとうくにこ、マリンバ)、ホン・ユー(デグム横笛)、ウーンシク・キム(チャング太鼓)、さらに後半ではイリャン・チャン指揮により、先ほどの演奏者+アンサンブル・ノマドが演奏した。

1曲目は韓国トラディショナルというので、伝統的な韓国の音楽という意味か、イリャン・チャンが作曲した伝統を踏まえた曲かはよくわからないが、デグムとチャングによる演奏で、2曲目からはマリンバが主になり、音が、大変新鮮に聴こえてくる。さらに後半はアンサンブル・ノマドが加わり、さらに複雑になった。多分今後の音楽を示している曲の一つと思われる。

イリャン・チャンによればあいさつ文で、「私たちは、音楽が実は私たちがその一部である自然へのリンクであることをほとんど忘れてしまっています。人々は実際にこれを感じ、分かっていれば、音楽を常に人々と共にあり続けるでしょう。人々も自然に属しているように、音楽も人々に属しているからです。」とあった。

デグムとは韓国の楽器で、篠笛のような横笛より大きな形、形としては尺八を横笛にしたような感じのものだった。多分吹き方は篠笛と似ていて、音も結構高い音がメインで、篠笛と近いが、時々は頭を縦に震わせ、腕も縦に揺らし、人間の息吹ないし、自然の揺らぎに近いものだが、この時には尺八の音と近くなる。このデグムという楽器が日本にはそのまま伝わらず、尺八になったとしたら興味深い話だ。ところで最近の横浜ボートシアターの小栗判官・照手姫の公演で出てきた横笛は、このデグムと相当似ていたが、これは台湾で購入したもので、バウというものだそうだ。歌口にリードがついているもので、1オクターブ+αしか音が出ないとのこと。多分これはこれで吹く対象が限られていて、目的があるのだと思われる。







写真:コンサート終了後の舞台の写真、ガムランで使うゴング・アグンやマリンバが合わせて使うガムランの打楽器、多分クトとクンピヤン、その他、更にマリンバ2台、ピアノやハープやヴァイオリンなどがあり、大編成となっている。