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2019/09/10

モーツアルトのムクドリ

ライアンダ・リン・ハウプト著「モーツアルトのムクドリ」 を読んだ。

モーツァルトは、飼っていたムクドリのさえずりから「ピアノ協奏曲第17番ト長調 K.453」の曲想を得たという話があり、それをテーマとして書かれたものである。曲は1784年4月12日に作曲された。モーツアルトはこの曲の完成前後で、ムクドリを購入し、飼っていたようである。



モーツアルトのムクドリに関するメモに対して著者は、

「ムクドリの歌の記譜はこの鳥の購入記録の“zugleich folgende” すなわち”すぐあとに“書かれたとあり、この彼がこのムクドリを買うと同時に歌を記録したことが示唆される。 」

とする。(モーツァルトは、ムクドリのさえずりを楽譜にしたっていうことは、筆者は、モーツアルトがムクドリから曲想を得たということに興味を持ち同じようにムクドリを飼ってみたいと思い、自然保護管の旦那さんがムクドリの巣の除去を行った際に孵ったばかりのひなを飼うことになった(本来は野生動物で飼うことはできないが、合法的に)。
名前をカーメンと名付けたムクドリとの共同生活で、モーツアルトのムクドリ(シュタール)との生活を再現しようとした。

筆者はこのカーメンにモーツアルトのピアノ協奏曲第17番ト長調の主題を覚えさせようとしたとする。シュタールはこのフレーズを歌えたことが記録に残されているからだ。しかし、「雛のころから1日少なくとも30回は自分のヴァイオリンでこの協奏曲のモチーフを弾いて聞かせた。」が、カーメンがそれを覚えることはなかったそうだ。そして、カーメンには別の好みがあるとする。

「鳥はほかの作曲家よりモーツアルトを好むと言われており、もしかしたらそれは事実かもしれない。だがカーメンは違う。彼女はバッハとブルーグラスの方が好きだ。喜びにあふれんばかりの反応からすると、お気に入りのバンドもある----グリーンスカイ・ブルーグラスだ。」

さらに読み進むと、本文第6章でモーツアルトのムクドリ(シュタール)が購入されたのは、作曲された4月12日より後の5月27日と支出簿にあることが判明する。

「ここまで読んだ方はもう、ムクドリが簡単なフレーズを模倣できることには驚かないだろう。とはいえ、この鳥がモーツアルトの旋律をどうやって覚えたかは、様々な説が流布している。」

として、モーツアルトが購入する前からムクドリ-シュタール-はこのモチーフを覚えていたか、購入した後に覚えたのか、この問いについて著者は悩みに悩んでいる。結論は読んでのお楽しみとさせていただく。

ムクドリは、一般的には大きな群れで街中の大きな木などをねぐらとして生活し、鳴き声は騒音となり、糞で周囲を汚す害鳥と思われている。しかしこの本のおかげでかわいいい鳥という面を知ることができた。

事務所からみえる大きな竹に止まったムクドリ

「ムクドリが音声模倣をしたからといって、驚くにはあたらない-------ムクドリ科の鳥として、世界でも屈指の物まね上手な種に属し、鳥や楽器のほか、人間の声も含む様々な音を上手にまねる能力はオウムにも引けをとらない。」(本文より)
そうだったのだ。きっとモーツアルトもそのことを知っていたに違いない。多分ムクドリは人を含めた周囲の環境に適応しながら、コミュニケーションを取りながら、生きていることがわかる。

この春、我が家の庭でシジュウカラの子供が孵った。しばらく小さなシジュウカラが10羽近く飛んでいた。玄関の扉を開けると子供たちが目の前の電線に何羽もとまり、話しかけてくる気がした。何を言っているのかよくわからなかったが、遊んでくれと言っているようだった。

庭のシジュウカラの子供

シジュウカラの親

近くの駅の大量のムクドリたち(音量注意)。