ページ

2023/09/06

横浜混声合唱団コンサート2023

横浜混声合唱団のコンサートが92日(土)の午後130分から、紅葉が丘の神奈川県立音楽堂(木のホール)でありました。テーマは「中田喜直生誕100年を記念して 《今~また甦る》」と題して行われました。

プログラムを以下に示します。

『かざぐるま』から「ゆきのじゅうたん」、「もう春だ」、「おんぶとだっこ」、「山へ登ろうよ」

『おかあさん』から「あさ」、「しけん」、「すきやき」、「ねるとき」

『高田敏子の詩』による「三つの歌」より「八月のヒロシマ」、「水のこころ」、「合唱」

『歌う仲間たちとともに』から「ふるえながら」、「さよならは いわないで」、「ピアニシモの秋」、

「美しいい季節」、「アダムとイブ」、「おかあさんの歌声」

『ちいさい秋みつけた』から「ちいさな旅の思い出」、「バラ色の街で」、「博多人形に寄せて」、

「カーネーションに寄せて」、「ぎんなん」、「ああプランタン無理もない」

『みんなで一緒に歌いましょう』から「()めだかの学校」、「(夏) 夏の思い出」、

「(秋) 小さい秋見つけた」、「(冬)雪のふるまちを」

『おわりに』で、「別れの歌(さよなら)」

いずれもかわいらしい曲で、中田喜直の優しい気持ちが現れていた。自分も小さい頃によく聞いて育ったように思う。司会者が、中田喜直は手が小さいので、ピアニストは諦めたようだ。ヴァイオリンなどは子供の時には小さいタイプのものがあるが、ピアノは子供用がないので、ピアノが嫌いになってしまうと言っていた。

神奈川県立音楽堂のホールはほぼ満席でした。収容人員は、ほぼ1000名なので、随分人気のあるコンサートです。ただ合唱団の仲間や懐かしい曲ばかりのため、年配の人が多かったように思う。

建築設計は前川国男、音響設計は石井聖光で、昭和29年(19561031日に落成とあった。音響学会誌(1955)の「神奈川県立音楽堂の音響設計について」に音響設計の内容が残されている。それによれば1)余韻のある豊かな音にすること。2)音の分離性をよくすること。3)音楽堂内に一様に音が行き渉ること。4)反響がないこと。5)外部から騒音が侵入しないこと。があげられている。

 音律を含む音に関する歴史年表(2022.12.15)のYABブログでは、1954年神奈川県立音楽堂、1956年東京工業大学講堂、1957年杉並公会堂とある。とにかくホール用の音響設計としては、初めての試みである。

 内装は、音響学会の論文によれば、「舞台上の二葉の天井及びこれに続く二葉の天井を厚み13分の木製で作り、反射板の役目をさせ、天井の他の部分は波形し、音の拡散をはかっている。この波形部分は厚さ5分の木製、板振動による低音吸収が若干であるが、中高音域については吸音率10%以下にしてある。」

 

「二葉」の意味がよくわかりなせんが、舞台正面の天井および客席天井の反射板の役目を負っている反射板の部分は、厚み13分(3.94mm)の厚さの木製になっており、そのほかの波形の部分は厚み5分(15.15mm)となっているようだ。この波形のたちは、特徴のある武蔵野公会堂の天井にている。音の拡散性がよさそうである。

 また「側壁は2分および3分のベニア板で」つくられているようだ。2分は6.06mm、3分は9.09mmとなる。したがってサントリーホールように表面は木のように見えるけれど、内部は不燃材で補強している状態とは違って、チラシに書いてあるように、(木のホール)そのものと言えます。多分現在の建築基準法では、不燃材でつくる必要があるが、それより以前の建物であるから成立しているものとおもわれます。

残響時間の測定結果は、論文によれば、空席で1.5/500Hz、満席で約1.2/500Hzです。したがって容積6550㎥にたいし、オペラにたいして、Beranekは最適残響時間を約1.3秒としているので、合唱に対しては声の明瞭性もあり、好ましい音響特性といえます。私の座った席も中通路より少し後ろで、明瞭できれいな響きを感じました。

 このコンサートのポスターで、横浜市歴史博物館で、中田喜直展をやっていることがわかり、先日(9/5)に行ってきました。展覧会の入り口には、中田喜直が開発した幅の狭いピアノがおかれていました。1オクターブで1cm狭いもののようです。また第二次世界大戦の終戦の815日の翌日、中田喜直は4通の遺書書いていました。それが残っていました。戦争とはむごいものです。しかし死なないでよかった。その時に死んでいたら、中田喜直の歌が今のように残っていません。小さい秋みつけたの楽譜を買ってきました。





2023.10.15 朝日新聞朝刊に吉田純子氏の「日曜に想う」「少数派の痛み 見ぬ振りしない」という記事が載った。読んでみると中田喜直についてだった。後半にピアノのサイズを小さくしたことを現実には難しいのではと話をしたら、中田喜直は「難しいとしか言わない人は、大体において現実を変えたくない人なんですよ。中略、そういわせる人々への怒りが強い語調ににじんだ。中略、そんな風にこの意志を冷笑する人たちが、やがて多数派となって『権力』になっていくのだと。」記事の最後には「鍵盤幅の狭いピアノの開発は今も、ピアニストのダニエル・バレンボイムが独自に取り組んでいる。」

この話が実現するといいと思っている。